乳調製品の輸入急増に悩むカナダ酪農




高率の 2 次関税を伴う関税割当制度により国内酪農を保護

 カナダは、先のウルグアイ・ラウンド農業合意において、同国の酪農産業を守
るため、牛乳・乳製品及びその調理品に対して関税割当制度を適用するとともに、
それらの製品に対して300%前後の2次関税を課すことにより、実質的に輸入禁止
的な措置を講じることとした。

 しかしながら、カナダは、乳製品を50%以上含む調製品に対しては関税割当制
度を適用することとしたものの、乳製品が50%未満の調製品については関税割当
制度の対象とはしなかった。


95年以降、乳調製品の輸入が急増

 この結果、WTO協定が実施に移された95年以降、このような規定のすき間を利用
した乳調製品の輸入が急増している。特に輸入が急増しているのは、砂糖51%、
バターオイル49%からなる乳調製品で、主に低価格帯のアイスクリームの原料と
して利用されている。

 これらのバターオイル・砂糖調製品は、主として米国から輸入されているほか、
ニュージーランド、メキシコ、EUなどからも輸入されている。96年の輸入量は、
前年の約 2 倍にあたる3,800トンであった。また、97年には、9 月までの累計で
既に前年実績の 2 倍以上に当たる7,900トンが輸入されており、その急増ぶりが
うかがえる。カナダ酪農生産者連盟(DFC)によれば、乳調製品の輸入によるカナ
ダ酪農産業の損失額は、年間 5千万カナダドル(約45億円)以上に及ぶとしてい
る。

 このようなバターオイル・砂糖調整品の輸入急増に対し、DFCは、連邦政府に対
して、過去 1年半以上もの間、同製品の輸入が実質的に停止されるよう、これを
関税割当の対象となる関税番号に再分類するよう要求していた。


カナダ政府、同問題に関する調査を実施

 連邦政府は、今般、このような要求を背景として、カナダ国際貿易裁定委員会
(CITT)に対して、WTO協定の関税割当制度によってカバーされていないバターオ
イル・砂糖調製品を含む乳調製品の輸入問題について、調査・検討するよう要請
した。この要請に基づき、CITTは、乳調製品の輸入がカナダの酪農生産者及び産
業に与える影響や、国際的な権利及び義務などについて検討し、98年 7 月 1 日
までに調査結果を報告することとなっている。

 しかし、カナダは、WTO協定に加え北米自由貿易協定(NAFTA)においても、50
%未満の乳調製品を関税割当の対象としない旨を約束しており、これを覆すこと
は相当困難とみられている。



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