◇絵でみる需給動向◇
豪州統計局(ABS)によると、98年3月末時点の肉牛飼養頭数(乳用牛を除く) は、前年同期比0.5%減の2,371万頭となった。 豪州の肉牛飼養頭数は、90年代に入ってからは、アジアをはじめとする海外市 場の拡大などにより、増加基調で推移してきた。しかし、ここへきて、わずかで はあるが減少に転じている。 ◇図:肉用牛飼養頭数の推移◇
肉牛飼養頭数が減少に転じた背景としては、干ばつの影響によると畜の増加が 挙げられる。特に豪州南東部の多くの肉牛生産地域で、98年3月頃まで干ばつ傾 向が続いたことにより草地が劣化したため、肉牛農家が牛群の整理を行ったこと が頭数減少の要因となったと考えられる。中でも、98年に入ってからは全と畜に 占める雌牛の割合が5割以上と、過去十数年間で最も高い水準となっている。な お、通貨危機の影響による東南アジア向けの生体牛輸出が減少したことにより、 これが豪州国内市場に向けられたことも、と畜頭数増加に影響しているようであ る。
飼養頭数を州別にみると、特に干ばつの影響が大きかった豪州南東部のニュー サウスウェールズ州やビクトリア州で前年同期比それぞれ 6 %、 9 %とかなり の減少となった。一方、肉牛頭数全体の4割強を占めるクインズランド州と、ノ ーザンテリトリーの北部地域では、干ばつの影響も余りなく、前年同期比それぞ れ3 %、2%の増加となっており、南東部での減少を相殺するかたちとなった。 しかし、東南アジア向け生体牛輸出に依然として回復の兆しがみられないことか ら、繁殖牛の整理が拡大する傾向にあるとされている。 以上のことから、ミート・アンド・ライブストック・オーストラリア(MLA)で は、短期的には肉牛飼養頭数が拡大に向かう要因は少ないとする一方、豪州農業 資源経済局(ABARE)によると、 4 月以降は干ばつの解消によって草地状態が改 善されており、また、それに伴う肉牛価格の上昇などによって、次年度には牛群 が建て直されることで飼養頭数が微増するといった予測もなされており、今後の 動向が注目される。 州別肉牛飼養頭数 資料:ABS「Principal Agricultural Commodities」 注: 3 月末時点での飼養頭数、( )内は対前年比
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