◇絵でみる需給動向◇
EU委員会は、98年から2005年までの牛肉需給見通しを公表した。これは、現行 の共通農業政策(CAP)、ガット・ウルグアイラウンド(UR)合意内容を前提とし て策定しており(前提条件はEUの牛乳・乳製品の需給編参照)、同委員会は現行 政策における牛肉分野の中長期的な見通しを認識することが重要であるとしてい る。
今回公表された牛肉需給見通しによれば、生産量は96年に発生した牛海綿状脳 症(BSE)問題に伴い実施された子牛のと畜奨励事業(Calf Processing Premium) などの生産抑制措置により漸減し、99年には742万 5 千トンになると見込まれて いる。しかし、2000年以降増産に向かい2002年には828万 1 千トンとなるが、そ の後は再び減少し、2005年には753万 6 千トンになると予測されている。
一方、消費面では、96年はBSE問題により牛肉のイメージが大きく損なわれたこ とから、 1 人当たり消費量が大幅に低下し、前年比7.7%減の18.6kgとなった。 97年以降牛肉消費は徐々に回復し、2001年には19.4kgに達するものの、その後は 再び減少し、95年以前のような20kg台に回復するのは困難と見られている。 これにより、EU全体の消費量は96年の692万4千トンを底に2001年には731万90 千トンに回復するものの、その後は減少に向かうものと予測されている。
このような需給状況から、BSE問題により97年末に63万トンに積み上がった牛肉 在庫量は、生産抑制と消費回復により、2000年末には6万トンに減少すると見込 まれている。しかし、2001年以降の介入在庫量は再び増大し、2005年末には146万 4千トンに達すると予測されている。 このように、EUの牛肉需給は消費減という長期的トレンドに変化はなく、また、 現行のCAPではそれに見合った生産減が見込めないことから、過剰体質を依然とし て内在しているといえる。
EU委員会は今年 3 月に正式にCAP改革案を提出したが、その中で牛肉分野につ いては現行の価格支持水準の実質30%引き下げが示され、乳製品の15%、穀物の 20%に比べ大きな引き下げ率が提案された。 フィシュラー農業委員は、「この需給見通しは、我々の提案したCAP改革が正し い方向であることを示している」と話しており、EU委員会としては、今回示され た需給見通しを楯に、過剰体質が指摘されている牛肉分野において価格支持の実 質30%引き下げを断行する狙いがあるものとみられる。 EU委員会による2005年までの牛肉需給見通し (注) 1 数値は枝肉ベース (注) 2 消費量のカッコ内数値の単位はキログラム (注) 3 96年および97年は実績値、98年以降は見込値
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