◇絵でみる需給動向◇
米国はカナダから肥育牛を中心に年間 100万頭以上の生体牛を輸入する一方、 カナダへは肥育素牛を中心に年間約4万頭を輸出するにとどまっており、両国間 の生体牛貿易は、カナダ側の大幅な「出超」となっている。生体牛輸入に係る関 税は、北米自由貿易協定(NAFTA)に先立って締結された米国・カナダ間の協定に より、それぞれの国で93年から既に無税となっており、このようなアンバランス が生じる要因は、基本的に生体牛の価格差や食肉産業の規模の違いとみられてい る。ただし、米国の生産者団体は、カナダに輸出する場合の検疫手数料が割高で あることなどが要因の一つであるとして、強い不満を持っていた。このため、両 国政府は協議を重ね、97年10月末に、「北西部パイロットプロジェクト」に合意 した。これにより、米ワシントン州およびモンタナ州からカナダ・アルバータ州 の指定フィードロットへの生体牛(肥育素牛)輸出については、特定の伝染病に 係る検疫が免除されることとなった。(詳細は、「畜産の情報」(海外編)97年 12月号、29頁参照) ◇図:米国の対カナダ生体牛輸出入の推移◇
米国からカナダへの生体牛の輸出頭数を月別にみると、それまで横ばいで推移 していたが、同プロジェクト合意後の97年12月から増加傾向が顕著にみられるよ うになった。しかし、98年1〜 5 月までの輸出頭数の累計は、前年同期の約2.1 倍の 3 万 4 千頭と増加しているものの、依然として、両国間の生体牛貿易は、 カナダ側の大幅な出超の状態が続いている。 また、同プロジェクトにおいては、前述した米2州から肥育素牛を輸入した場 合、輸入牛だけでなく、同一フィードロット内の全肥育牛についてカナダ国内で の移動制限などを義務付けていたため、カナダ国内のフィードロット業者は、そ の改善を強く求めていた。 こうした状況を受けて、カナダの農業大臣は、同プロジェクトにおける生体牛 貿易の拡大を図るため、動物衛生法を改正し、生体牛輸入に関する規制をさらに 緩和することを明らかにした。今回の法律改正について、米国の全国肉牛生産者 牛肉協会(NCBA)は、歓迎の意向を示すとともに、今後、同プロジェクトの対象 州を北部全州に拡大するよう求めていくことを表明している。 ◇図:米国からカナダへの生体牛輸出頭数◇
一方、米国のカナダからの生体牛の輸入頭数は、米国内での肥育牛価格低迷を 受けて、98年 1 〜 5 月までの累計で、前年同期比4.6%減の57万 9 千頭にとど まっている。 しかし、アジア地域などの経済状況の悪化に伴う輸出不振のため、米国産農産 物の価格が低迷していることから、米国生産者の不満が高まっている。このため、 サウスダコタ州をはじめ米国北部を中心に、生体牛を含むカナダ産輸入農産物に 対して、州政府が検疫を強化する動きが拡大している。(詳細は、トピックス4 頁参照)
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