米国の鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○緩やかな伸びを示すブロイラー生産


98年見通しは前年比1.9%増

 ブロイラーの生産は、80年代後半以降、毎年5%を超える成長率を保持してき
たが、97年からは鈍化傾向が続いている。米農務省(USDA)によると、98年1〜
8月の生産量(可食重量ベース、以下同じ)は、前年同期を2.9%上回る伸びにと
どまった。98年に入ってからも緩やかな伸びにどとまっている主な要因は、今春
から夏にかけてブロイラーの主要生産地である南部地域が猛暑に見舞われたこと
により、ブロイラーの増体率が低下したことが挙げられる。このため、USDAは、
98年通年の生産見通しについて前年を1.9%上回るとし、これまで発表していた予
測値から0.1ポイント下方修正した。しかし、最近のブロイラー生産は、近年まれ
にみる高収益を挙げており、生産者の増産意欲は一層促進されることが見込まれ
るため、99年の対前年増加率については、これまでの5%台に回復できるものと
見込んでいる。


大手企業による寡占化が顕著に

 こうした中、全米ブロイラー協会(NBC)による、 1 週間当たり平均のブロイ
ラー生産量を比較した企業ランキング(98年中間時点)が発表された。これによ
ると、第10位はタイソン・フーズ(本社アーカンソー州)で、続いてゴールド・
キスト(本社ジョージア州)、パデュー・ファームズ(本社ジョージア州)、ピ
ルグリムス・プライド(本社テキサス州)、コナグラ・ポールトリー(本社ネブ
ラスカ州)となっている。第 1 位のタイソン・フーズ社は、第 2 位と比べて3
倍近くもの生産規模であることがうかがえる。また市場占有率をみると、上位5
社で54%、上位10社でおよそ 7 割を占めている。20年前では、上位 8 社で約25
%を占めていたとする調査結果もあり、市場の寡占化がより顕著になっているこ
とが分かる。さらに、これら大手企業の中には、種鶏部門も併設している場合が
多く、市場に適応したさまざまなブロイラーを生産できるという強みを持つこと
から、今後ますます寡占化が加速するとみられている。

ブロイラー生産規模別企業ランキング

 資料:National Broiler Council 調べ
  注:平均週間生産量、可食重量ベース


企業の再編が始まる

 先ごろ、タイソン・フーズ社は不採算部門となっている七面鳥やシーフードな
どブロイラー以外の部門を清算する意向を発表し、手始めに七面鳥の生産施設を
他社へ売却することを決定した。同社関係者によると、本業であるブロイラー生
産へ特化するとのことで、トップ企業のこうした決断に対し、業界内では動揺が
広がっている。しかし、生産拡大を支えてきた輸出部門が、最大の輸出先である
ロシア市場の状況悪化により、これまでとは様相を異にしていることから、今後
の成り行き次第では、他社についても大幅な経営再編を求められる可能性がある。


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