EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○2005年までの生乳生産量などの見通しを公表


現行のCAP、UR合意を前提に策定

 EU委員会は10月 2 日、98年から2005年までの主要農産物(穀物、酪農、食肉)
に関する需給見通しを公表した。この需給見通しを策定するに当たっての前提条
件は、次のとおりである。

1 共通農業政策(CAP)は、現行と同様に適用される。

2 輸入や補助金付き輸出に関するガット・ウルグアイラウンド(UR)合意内容
 は、2005年まで変化のないものとする。

3 農業統計などは今年 8 月15日時点を基に策定しており、 8 月下旬に発生し
 たロシアの経済危機は織り込んでいない。


生乳生産量は微減

 今回示された需給見通しの中で、生乳生産量については現行の生乳生産割当(ク
オータ)制度を前提とした上で、乳用経産牛の飼養頭数は、98年の2,127万 1 千
頭から年率1.7%〜2.0%の割合で減少し、2002年には2千万頭を割り込み、2005
年には1,855万 5 千頭になると予想されている。一方、1頭当たりの泌乳量は98
年の5,594kgから年率約1.75%の割合で増加し、2003年には6千kgを突破し、2005
年には6,317kgと予測されている。このように、1頭当たりの泌乳量は増加するも
のの、乳用経産牛の飼養頭数は減少することから、生乳生産量は年率約0.2%の割
合で緩やかに減少し、98年の 1 億2,030万トンから2001年には、 1 億 2 千万ト
ンを割り込み、2005年には 1 億1,860万トンになると見込まれている。

 なお、併せて公表された主要乳製品の生産見通しでは、バターおよび脱脂粉乳
の減少が見込まれる一方、チーズについては、輸出補助金の削減による域外向け
輸出の減少が予測されるものの、域内消費の伸びや生乳生産が増加した場合の調
整弁としての役割が期待されていることから、増加が見込まれている。

EUの生乳生産量などの見通し

 資料:EU委員会
  注:( )内は、97年 4 月公表の見通し


CAP改革の動向がカギ

 しかし、今後のEUの生乳生産量などの実際的な見通しについては、99年3月の
最終決定まで紆余曲折が予想される CAP改革の動向を考慮する必要があるとみら
れる。

 今年 3 月にEU委員会が発表したCAPの酪農分野の改革案では、生乳生産クオー
タを、2001年度から2004年度までに 2 %増加(加盟国全体で約1億1,800万トン)
させることが提案された。そのうち、 10 %は山岳地域を抱えるドイツやフラン
スなど 9 カ国に、残りの 1 %は各加盟国に割り当てられる。各加盟国割当分は、
若年生産者への優先的配分が奨励されている。また、バターや脱脂粉乳の介入価
格の15%引き下げなども提案された。しかし、この案に対し、イギリスやイタリ
アなど4カ国は9月17日、生産クオータの4%増加、介入価格の30%引き下げを
求める決定を行った。また、クオータ制度については、これら諸国が、2006年以
降のクオータ制度廃止を求める一方、ドイツとフランスは2006年以降もクオータ
制度を維持するため、今後協力し合うことを確認するなど、加盟国間の意見の対
立が鮮明になりつつある。

 なお、EU委員会は、今回の報告書で現状の場合における酪農分野の中長期的な
見通しを認識することが重要であるとする一方、現在、加盟国間で議論が行われ
ているCAP改革の必要性を改めて主張している。


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