肉牛の先物取引を検討(豪州)


生産者の販売リスク軽減を目的

 豪州では、草地での放牧肥育が主流であることや、生産量の6割以上が輸出に
振り向けられるという基本構造を反映し、その肉牛価格は、周期的に訪れる干ば
つなどの気象条件や、海外の牛肉市場の影響を受け、比較的大きく変動しやすい
側面を持っている。

 このため、現在、生産者の販売リスク軽減を目的に、生体牛の先物取引が検討
されており、業界団体であるミート・アンド・ライブストック・オーストラリア
(MLA)から、このほど、先物取引の骨格となる価格指標に関する検討報告書が発
表された。


価格指標は生体市場での競売価格を基に算出

 これによると、価格指標は、@去勢または未経産、A主に国内市場向けでヤン
グ・キャトルと称されると畜重量111〜240kg程度のもの、B標準的な肉付きで、
かつ、適度に脂肪が乗っていること、などの条件を満たす生体牛を対象に、クイ
ンズランド州、ニューサウスウェールズ州およびビクトリア州の東部3州の生体
市場での競売価格を基に算出される。この生体市場での競売価格を基に、去勢と
未経産との歩留格差を是正するため枝肉重量換算での加重平均とし、さらに7日
単位での移動平均にしたものが価格指標として検討されている。

 価格指標からは、対日輸出の大宗を成す大型の牛や、近年急激に増加し、現在
では肉牛取引全体の33%を占めるとされる生産者とと畜業者による枝肉での相対
取引(豪州農業資源経済局の95年度調査、なお生体市場での取引は41%で最大)
は、現時点では、データとしての公正さや正確性に欠けるとの理由により除外さ
れた。また、価格情報の収集を東部 3 州とした点については、この 3 州で豪州
全飼養頭数の8割を占めることや、州政府の支配下で価格がモニターされ公正な
情報であることなどを理由として挙げている。


実用までにはさらなる検証が必要

 報告書では、過去の一定期間を検証したところ、今回モデルとした価格指標は、
豪州全域の価格傾向や、日本向けの大型去勢牛や米国向けの経産牛などの価格傾
向との連動という観点からは、信頼できる水準にあるとしている。しかしながら、
一方で、価格の季節性など、長期的な要因に関する信頼性は検証されていないと
し、実用までには、さらなる検証が必要と指摘している。

 現在、先物取引が行われている農産物は羊毛と小麦に限られており、生産者の
ための新たなリスクヘッジ手段として、また公正な価格形成のためにも、先物取
引の導入が期待されている。しかしながら、報告書でも指摘されているが、近年
拡大する相対での枝肉取引を価格指標に組み入れることは大きな課題といえる。
また、先物取引の対象は、標準品化されることが大きな条件の一つとなるが、既
に生体牛の先物取引が行われている米国とは異なり、豪州の生体牛は飼養管理や
牛のタイプなどの点で平準化が難しい面もあり、今後の運営委員会での検討が注
目される。



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