輸送規則の改正が生体牛輸出に影響(豪州)


家畜輸送環境改善のため、暫定的規則改正を実施

 豪州では、本年3月、イスラエルに向けて生体輸出されていた牛が、輸送船内
の換気不良によって300頭以上も死亡するという事故が発生し、動物愛護団体など
からの抗議が相次いだ。このため、政府・業界が一体となって対策を検討してい
たが、先般、豪州第一次産業・エネルギー省(DPIE)は、東南アジアおよび日本
を除く各地域に向けた家畜生体輸出について、その輸送環境を改善するべく、次
の内容の暫定的規則改正を行った。

1 北半球の夏季に当たる 5 〜 9 月において、ヨーロッパ品種の牛を同地域に
 輸出する場合には、輸送家畜の平均生体重が400kg を10kg超えるごとに輸送密
 度を 1 %減ずること

2 生体重が500kgを超えるヨーロッパ品種の牛を輸出しないこと

3 輸送中の家畜飼養環境に係るすべてのデータを速やかに家畜輸出協議会 
 (ALEC)に提出すること     

4 豪州検疫検査局(AQIS)の管理官が定める分量および種類の獣医薬、敷料、
 補助飼料等を積載すること


来年 5 月までには、新たな規則が制定される見込み

 DPIEは、今回の規則を暫定措置とした理由について、現在、ALECが輸送中の飼
養密度、換気条件などに関する調査を行っていることから、本年末に予定されて
いる当該調査の報告を受けて、それに基づく新たな規則を定めるためとしている。
従って、北半球の夏が始まる来年5月までには、新たな規則が制定される見込み
である。

 また、DPIEは、豪州から輸出される生体牛の80%が今回の規則の対象とならな
い熱帯種の牛であること、小規模な生体牛輸出の大部分は種雄牛であり、輸送中
の飼養環境が良好であること、さらには輸送条件の改善によりリスクが軽減され
ることなどから、今回の暫定規則改正が生体牛輸出に及ぼす影響は少ないと見積
もっている。


業界側は、コスト増加などで不満を表明

 これに対し、業界側は、飼養密度の制限による輸送コストの増加、獣医薬品費、
敷料費、補助飼料費の増加等により輸出条件が既に悪化しているとし、さらに、
輸送中の家畜を管理すべきAQIS認定の獣医師が不足しているなどと不満を表明し
ている。

 豪州からの生体牛輸出は、インドネシアなどの東南アジア向けを中心に、近年、
急速に増加し、97年には80万頭を超える高水準に達した。しかし、同地域向けの
輸出は、昨年後半以来、経済危機の影響により、大幅に減少しつつある。

 一方、従来は主にアイルランド産生体牛の市場であった中東地域にも進出し、
同国からの輸出が牛海綿状脳症(BSE)のため規制されたことを背景にシェアを拡
大している。ただし、東南アジアとは異なって輸送距離が長いだけに、輸送中の
事故も多くなっている。

 豪州の生体牛輸出は、近年急速に発達したものであるだけに、今回の一連の規
則改正が、今後、どのような影響を及ぼすか注目されている。



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