豪州でニューカッスル病発生


シドニー近郊の養鶏場でニューカッスル病が発生

 ニューサウスウェールズ(NSW)州農業省よると、 9 月18日、シドニー西部と
北西部に位置する2ヵ所の養鶏場でニューカッスル病(ND)の発生が確認された。

 今回確認されたNDは極めて毒性が強いとされ、農業省の下、問題の養鶏場では
9万羽以上に及ぶ鶏の処分をはじめとするND拡散防止対策が講じられている。ま
た、NDが確認された養鶏場を中心に、シドニー市内を含む約60km四方を生きた家
きんおよび家きん肉の移動禁止区域、それを取り囲む周辺地域を監視区域に設定
するなど厳重な検疫体制が敷かれている。


現時点では小康状態に

 NDは伝染力が強い上、重症型の場合には罹患鶏の致死率も非常に高いことなど
から、養鶏業界で最も恐れられている病気の一つだが、これまで豪州での発生は、
外国船から廃棄されたND汚染鶏肉が原因となって、1930年と32年にビクトリア州
メルボルンでみられたのみだった。

 当時でも数千羽という鶏が処分されたが、今回の場合、生きた家きんおよび家
きん肉の移動禁止区域だけで、NSW州の鶏肉生産全体の5〜 6 割を占めるとされ
ている。問題の養鶏場から出荷された鶏肉の追跡、回収については困難を極めて
いるとされ、既に、業界内からは「後は、(NDが)拡散しないように祈るより他
ない」との悲観的な声も出ていたが、10月の第1週現在では、被害の拡大は確認
されておらず、監視区域が縮小されるなど小康状態にある。


鶏肉輸入に関する検疫条件の見直しにも大きな影響

 一方、今回のND発生は、豪州の鶏肉輸入に関する検疫条件の見直しにも大きな
影響を与える可能性がある。豪州政府は、タイや米国など鶏肉輸出国の要請によ
り、昨年11月に鶏肉輸入の解禁を決定した際に、疾病侵入防止という検疫上の理
由から、摂氏70度で143分間の加熱処理という厳しい条件を付しており、食用鶏肉
の輸入は実質的に困難な状況にある。

 この背景には、現政権が、国内自給型の養鶏産業保護を優先し、輸入規制の緩
和については、10月3日の連邦総選挙まで先送りを図ったとの見方もあるが、豪
州政府は科学的根拠に基づいた決定と主張していた。

 これまで豪州政府は、NDが豪州に存在しないことを大前提に、鶏肉業界へのダ
メージが最も大きい疫病としてNDの上陸阻止を大きな理由の一つに「検疫」を守
ってきただけに、今回の発生は、今後、検疫条件の見直しを早める大きな要因と
なる可能性もある。


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