養豚産業の現状と課題(マレーシア)


規模拡大が進むも、飼養頭数は94年をピークに減少

 マレーシアの養豚産業は、西マレーシアに集中しており、農家戸数は 1,909戸、
飼養頭数は244万頭で、1戸当たり平均1,279頭(97年、以下同じ。)を飼養して
いる。日本の同739頭(98年 2 月時点)と比較しても、規模拡大が進んでいると
いえる。しかし、農家戸数は毎年減少しており、また、飼養頭数も94年の 249万
頭をピークに減少傾向となっている。

 飼養規模別の農家戸数は、百頭から 5 百頭未満が、全体の約37%、 5 百頭か
ら1 千頭未満は約25%となり、 1 千頭未満で全体の約7割を占めるに至っている。
しかし、1千頭規模未満の農家の飼養頭数が、全頭数の24%を占める一方、全農
家戸数のわずか 4 %に過ぎない 5 千頭以上層で全飼養頭数の 3 分の 1 を占め
ている。


輸出のほとんどは生体でシンガポールに

 豚の生産量は、94年の416万頭をピークに、毎年少しずつ減少し97年では403万
頭となっている。

 輸出量は前年比 5 %減の103万頭となり、そのほとんどが生体豚としてシンガ
ポールに輸出された。なお、10年前は、シンガポールと国境を接しているジョホ
ール州からの輸出が全体の約4割を占めていたが、マレーシアを縦断する高速道
路の開通などにより、タイに隣接する北部ペラ州からの輸出頭数が倍増し約4割
を占め、逆にジョホール州からの輸出は約 2 割に低下した。

 輸入量(内臓を含む。)はわずか 2 千 5 百トンで、中国、カナダなどが主な
輸入相手国であった。国内消費量は3百万頭、部分肉換算で18万トンとなってい
る。宗教の制約を受けない者による一人当たりの年間消費量は、近年減少傾向で
推移したものの97年は96年より 0.1kg増加して30.7kgとなった。この結果、97年
の豚肉自給率は134%となっている。


豚価は高水準で推移するも、環境規制がネックに

 また、ここ10年間の豚の農家販売価格は、96年の4.1RM/kg(約144円:1RM=
約35円)が最高となり、97年はやや下げたものの、3.9RM/kg(約137円)と高水
準で推移した。なお、最近の同価格は、通貨危機の影響による多くの養豚農家の
離脱、豚のへい死率の上昇および子取り用めす豚の受胎率の低下などにより出荷
される肥育豚が減少し、大幅に上昇している。

 一方、2000年より豚舎から排出される汚水の生化学的酸素要求量(BOD)が50p
pm以下に規制されるなど水質汚濁防止に関する環境規制が厳しくなるため、これ
は今後、同国の養豚産業の拡大にとって大きな課題になるものとみられている。


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