再建策を模索する酪農(インドネシア)


牛乳価格高騰、消費減少が深刻な問題に

 インドネシアでは牛乳価格が高騰するとともに、消費量が大きく減少しており
深刻な問題となっている。

 牛乳加工協会会長は現在の状況を、@牛乳の原料となる粉乳類の多くを輸入に
依存しているため、通貨の大幅な下落の影響で通貨下落以前に比べると牛乳価格
を4倍以上に値上げしなければならない。Aしかし、国民所得の急激な減少で消
費者は主食となる米などを優先して購入していることから、牛乳消費が大幅に減
少しているため、2倍以下の値上げに抑えざるを得ない状況となっている、と述
べている。

 今年の1人当たり年間牛乳消費量は、通年ベースに換算すると、前年の約7kg
(速報値)から約 3 kg(推計値)へと約 6 割もの減少となり、80年代の水準に
後退するものと見込まれている。ちなみに、同消費量は77年に3kgを超えた後、
順調に増加し、95年には 7 kgに達した。

 このため、各乳業会社は、製品包装の簡易化の徹底などにより、製品価格の引
き下げに努めるとともに、国内の生乳自給率を早急に高める政策を講じるよう政
府に強く要請している。


政府は生乳生産の向上を支援

 これに対して政府は、短期的には、消費を刺激するための何らかの補助、乳業
会社への融資や補助金などの交付、諸外国からの支援の受け入れなどを行うとし
ている。また、長期的には、多くの酪農家、酪農協同組合の活性化、自国の豊富
な天然資源の有効利用などにより、酪農産業を再建することが可能としている。

 そのための具体策としては、生乳生産の向上を図るために人工授精の実施によ
る遺伝形質の改良、流通機構の改革、酪農関連器具・装置の普及、業界の育成な
どを盛り込んだ改善計画を実施するとしている。また、97年から日本の国際協力
事業団の支援を受けて実施している酪農技術改善事業などにより、酪農家の飼養
管理技術を改善し乳牛の泌乳量を高めることで、生乳自給率の向上を図るとして
いる。


輸入減により生乳自給率が 5 割に

 一方、政府は、現在、輸入粉乳 1 トン当たりの価格が2,200米ドル、生乳換算
で 1 kg当たり27.5米セントとなっており、 1 kg当たり20米セントにも満たない
同国の生乳農家販売価格と比較すると輸入品はかなり割高となっている。このた
め、通貨危機以前、生乳需要量のうち、約3割であった国産生乳の供給割合が輸
入量の減少により約5割に上昇するなど、今後は国産生乳の自給率を高める絶好
の機会になるとの見方もなされている。


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