USDA、EPA、畜産経営体に対する水質保全対策の統一草案を公表(米国)


畜産環境問題への関心の高まりから、統一草案の公表を2ヵ月前倒し

 米農務省(USDA)は、 9 月16日、環境保護庁(EPA)との共同による畜産経営
体に対する水質保全対策の統一草案を発表した。これは、今年2月、クリントン
大統領が発表した水質保全アクションプランに基づくものである。EPAは 3 月初
旬、畜産経営体に対する独自の水質保全対策の草案を発表しており、USDAとの統
一草案については、当初、今年11月までに取りまとめるとしていた。しかし、今
回の統一草案の公表が、予定を早め、2ヵ月前倒しして行われたことは、米国に
おける畜産環境問題に対する関心の高まりを受けてのものとみられている。

 水質汚染にはさまざまな原因があるが、州政府からの報告によれば、農業が最
も広範囲にわたる汚染源として挙げられている。中でも、畜産経営体(AFO:放牧
経営以外の畜産経営体)から流れ出る水は、富栄養化などの原因となり、水質や
公衆衛生に悪影響をもたらすとされている。


2008年までに、全畜産経営体に包括的栄養分管理計画の策定を求める

 このため、今回の草案では、畜産経営体からのふん尿などの流出による水質汚
染などを最小限に食い止めるため、技術的かつ経済的に実行可能な包括的栄養分
管理計画(CNMP)を2008年までに全てのAFOが策定することを求めている。USDAお
よびEPAは、AFOの定義に当てはまる45万戸のうち、約95%の中小規模の畜産経営
体に対しては、この計画の自主的導入を推進することとし、また、 10万 5 千戸
〜 2 万戸の大規模畜産経営体 (CAFO: 1 千家畜単位以上*1)に対しては、水
質保全法に基づく全国公害排出排除システム*2(NPDES)許可書の発行条件とし
て、同計画を策定することを求めていくとしている。なお、現在、NPDES許可書を
取得しているCAFOは、約 2 千戸に過ぎない。

 草案によれば、CNMPには、@家畜ふん尿の栄養分が削減可能となるような飼料
給与管理、A水質汚染を防止するための適切な家畜ふん尿の取り扱いおよび保管、
B適切な家畜ふん尿の土地還元、C土壌管理、D家畜ふん尿の生産量およびその
利用に係る記録の保管、E家畜ふん尿の販売やコンポスト化などの利用可能な方
策などが、その項目として含まれるとしている。

(注1)家畜単位(AU:Animal Unit)は、体重1,000ポンド(約453kg)の去勢牛
   のふん尿排出量を基準に定められる。例えば、「1,000 AU」は、肥育牛で
    1,000頭、乳牛の成牛で700頭または、豚(体重25kg以上)では2,500頭と
   されている。

(注2)全国公害排出排除システム(NPDES:National Pollutant Discharge 
   Elimination System)とは、水質保全法(Clern Water Act)に基づく経営
   許可の仕組みである。点源汚染源(発生源を特定できる汚染源)とされる
   CAFOの場合、NPDES許可書の取得に当たっては、家畜ふん尿の排出防止、家
   畜ふん尿を保持するためのラグーンなどの施設の維持・建設などが求めら
   れる。


畜産経営に関する排出物を規制するガイドラインの改定と併行して、
段階的にNPDES許可書を発行

 また、畜産経営体に関する排出物を規制するガイドラインを、養鶏および養豚
経営体については2001年12月までに、肉用牛および酪農経営体については2002年
12月までに、それぞれ改定するとしている。

 さらに、水質保全法に基づくCAFOに対するNPDESの許可については、今後 2 段
階に分けて実施することとしている。まず、現行規則などに基づき第1段階の許
可書を99年春から発行するとともに、排出物を規制するガイドラインやNPDESの許
可に係る規則の見直しなどを行った後、第2段階の許可書の発行を2005年から実
施するとしている。

 今回の水質保全対策の実施に当たっては、政府、畜産業界、環境団体などの連
携による技術的、財政的支援に加え、啓もう、研究活動などが不可欠であること
から、USDAおよびEPAは、各方面からコメントを求めるとともに、11月末には公聴
会の開催を予定している。今後、最終案の決定に向けて、畜産関係者、環境団体
などからの意見を踏まえた調整が図られることとなる。


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