◇絵でみる需給動向◇
豪州南東部を中心とした主要肉牛生産地において、本年4月頃まで大規模な干 ばつが続き、草地が劣化したことから雌牛を中心とすると畜が大幅に増加し、昨 年秋口をピークに肉牛価格(日本向け肥育牛、豪州国内向け若齢牛)は下降し続 けた。しかし、5月以降は降雨に恵まれ、草地の状態が改善したことで生産者に よる肉牛出荷の保留が進み、肉牛価格は上昇し始めた。加えて、7月以降はニュ ーサウスウェールズ州の一部地域で集中豪雨による大洪水が発生し、肉牛の移動 が困難になるなど出荷頭数の減少も手伝って、肉牛価格はさらに上昇し続けてい る。 ◇図:牛肉価格の推移◇
肉牛価格が上昇する一方で、豪州産牛肉の対日オファー価格(グラスフェッド・ フルセット・冷蔵)は下落し続け(左図参照)、史上最安値を更新し続けており、 8月の第4週には 1 ポンド当たり108米セントとなった。 この背景には、日本国内における個人消費の低迷で需要不振が長期化しており、 商社が買い付けを絞り込んでいることが挙げられる。さらに、例年であれば梅雨 明け後に期待できるはずであった夏場の行楽需要が盛り上がらなかったことに加 え、持ち越しの在庫も残っており、輸入業者も積極的に買い付けられない状態で 先安観が強いことも影響していると思われる。
肉牛価格が上昇しているにもかかわらず牛肉の対日価格が記録的安値を更新し ているため、豪州のパッカーは大打撃を受けるところであるが、為替相場が米ド ルに対してかなりの豪ドル安で推移しているため、これが輸出中心のパッカーの 収益性の急速な悪化を防いでいると考えられる。また、この対米ドル安によって、 豪州と競合関係にある米国に対して輸出競争力が増していることもパッカーにと って有利に働いている。 ◇図:豪ドル/米ドル為替レートの推移◇
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