EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○子牛肉は牛肉生産量の 1 割


近年の生産量は牛肉全体の減少率を上回るペースで減少

 EUの子牛肉(ヴィール)生産は、78万2千トン(枝肉ベース、以下同じ。97年)
と、牛肉生産量(794万 4 千トン)の約1 割のシェアを占めている。

 しかし、近年、子牛肉生産は牛肉全体の減少率を上回るペースで減少している。 
ここ 50年間(97年/92年)の生産の動きを見ても、牛肉全体では4.9%減に対し、
子牛肉は6.9%減となっている。


乳用経産牛頭数の減少などが要因

 このように、子牛肉生産が牛肉全体の減少率を上回るペースで減少している背
景としては、子牛肉の主要な供給源である乳用経産牛頭数が年率 0 〜 2 %台で
一貫して減少していることから、生産される乳用初生牛も同様に減少しているこ
となどが挙げられる。

 一方、消費面から見ても、豚肉や家きん肉との競合が激しくなる中、用途がフ
ランス料理やイタリア料理などにほぼ限定されていることから、需要のすそ野が
なかなか広がりにくいことも 1 つの要因と考えられる。

 98年 1 〜10月の子牛肉生産状況を見ても、前年同期比1.6%減の71万 2 千トン
と、これまでの減少傾向を引き継いでいる。


生産国はフランス、オランダ、イタリアの 3 カ国に特化

 国別の子牛肉生産では、フランスがEU最大の子牛肉生産国で、97年の生産量は
25万1千トンと全体の 3 分の 1 を占める。2 位が子牛肉の輸出大国オランダで19
万 7 千トン、 3 位がイタリアで15万 9 千トンと、これら 3 大生産国でEU全体の
 8 割近くを占めている。

 一方、主要な牛肉生産国であるイギリス、アイルランドでは、ほとんど子牛肉
生産は見られないなど、国別でその状況は大きく異なっている。


施設利用型の経営が主、フランスでは粗放的な経営形態も/font>

 子牛肉の生産は、酪農の副産物である乳用初生牛などを導入し、これに飼料用
脱脂粉乳などを給与し哺育育成することから、粗飼料生産基盤としての土地を必
要としない。したがって、養豚や養鶏と同様に集約的で大規模な施設利用型の経
営を可能としている。

 オランダでは、高度に集約化された数社のインテグレーションにより効率的な
子牛肉の生産体系を確立している。加えて、総合的な品質管理システムにより消
費者サイドから高品質な子牛肉として信頼を獲得しており、輸出市場で高い競争
力を有している。

 フランスではオランダ同様、施設利用型の経営がある一方で、条件不利地域を
中心にリムザン種などを利用し、放牧により母牛とともに母乳で育てられる粗放
的な経営形態もある。このような伝統的手法により哺育育成された子牛肉は、同
国の子牛肉生産の 1 割程度を占めると言われており、その多くはフランス政府が
定めた高品質保証マークであるラベル・ルージュ(赤ラベル)の認定を受けてい
る。


フランス料理やイタリア料理で重要な食材

 このような飼養方法で 5 〜7ヵ月齢まで哺育育成し仕上げられた子牛肉は、淡
白な食材としてフランス料理やイタリア料理に使用され、一般の牛肉と異なる独
自の地位を確保している。EU以外の地域ではあまり多く見られない子牛肉生産で
あるが、EUの牛肉産業にとってその位置付けは必ずしも低くない。

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