米国の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○他の食肉との価格競争激化により、牛肉消費の減少に拍車


 米農務省(USDA)は、 2 月22〜23日に開催された「農業観測会議」において、
2008年までの農業全般の需給に関する長期見通しを公表した。牛肉需給に関する
概要は以下の通りである(策定に当たっての前提条件等については、44ページ参
照)。

牛肉需給の長期見通し
be-us05.gif (5526 バイト)
 資料:USDA「Agricultural Baseline Projections to 2008」
 注1:重量は枝肉ベース
  2:98年は見込み値、99年以降は予測値

牛群の拡大は2001年から、2004年には再び減少に転じる

 キャトルサイクル(肉用牛経営の収益性の変化がもたらす循環的な牛群消長)
は、95/96年(販売年度)の記録的な穀物価格の上昇に伴う肥育経営の収益性悪
化、子牛価格の低迷および96〜98年にかけての粗飼料の供給不足により、母牛の
とう汰が進んだため、現在、下降局面にある。今回の見通しによると、99年以降、
子牛価格の回復に伴い繁殖経営の収益性が好転するとみられることから、牛の総
飼養頭数は2000年に約9千7百万頭で底を打ち、その後増加に転じるものと予測さ
れる。ただし、個体の大型化などによりと畜時体重が高水準で推移するため、従
前と比較して飼養頭数が同水準であっても牛肉生産量は増加するとみられる。こ
のため、総飼養頭数は、次回のピークとみられる2003年においても、 1 億頭に達
することはないものと見込まれる。牛肉生産量は、キャトルサイクルのこのよう
な動きにほぼ連動して推移するとみられる。

◇図:牛の総飼養頭数◇


食肉間の競争が激化する中で、1人当たりの消費量は引き続き減少

 一方、消費について見ると、牛肉消費量は、若干の波はあるもののほぼ横ばい
で推移するとみられる。しかし、 1 人当たりの食肉全体の消費量が増加すると見
込まれる中で、 1 人当たりの牛肉消費量(枝肉ベース)は、99年の41.1kgから20
08年には37.7kgへと、10年間で8.3%減少すると予測される。

 小売段階で鶏肉や豚肉と競合している中級品質以下の牛肉については、他の食
肉と比較して生産費が高く小売価格も高いため、相対的に競争力が低下している。
このため、今後生産費の低減がさらに強く要求されるものと見込まれる。ホテル・
レストランや輸出に仕向けられる高級牛肉については今後とも需要が伸びると期
待されることから、価格は高水準で推移するものと見込まれる。

◇図:主な食肉の1人当たり消費量の見込み◇


輸出見込みを下方修正、牛肉純輸出国への転換も遅れる見込み

 輸出については、ガット・ウルグアイラウンド(UR)合意の下で進んだ市場ア
クセスの改善などが、今後も引き続き進展するとみられることから、グレインフ
ェッド牛肉を中心に牛肉輸出は増加すると予測される。この結果、生産量に占め
る輸出量の割合は、8%(98年)から11%(2008年)に拡大すると見込まれる。し
かし、主要市場である環太平洋諸国の輸入需要の回復が遅れるとみられることか
ら、輸出の伸びは前回見通しに比べ下方修正されている。

 輸入については、加工向けの牛肉などが豪州などから引き続き輸入され、飼養
頭数が減少し国内の加工向け牛肉供給量が減少する時期を中心に、輸入量は前回
見通しに比べ上方修正されている。この結果、牛肉純輸出国への転換時期も見通
し期間の末期に大きくずれ込むものとみられる。

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