EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○チーズ生産、ロシア経済の影響懸念もわずかに増加


域内消費に支えられ、前年同期比0.8%増

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、98年 1 月〜11月のEU15カ国の
チーズ生産量(ヤギ、水牛の乳から作られたものを除く)は、8月にEU最大の輸
出先であるロシア(97年の輸出量は、域外向け輸出の約4割を占める約19万 5 千
トン)で発生した経済危機の影響が懸念されたものの、前年同期比0.8%増の約5
44万 3 千トン(暫定値)とわずかに増加した。

 これは、生産の約 9 割を占める域内消費が南欧諸国を中心に引き続き好調であ
ったことが大きく影響している。その結果、98年のチーズの域内消費量は約645万
トン(ヤギ、水牛の乳から作られたものなどを含む)と、過去の記録を更新する
ことが見込まれ、生産量も約590万トンと過去を上回ると予測されている。

 なお、チーズの域外向け輸出は、ロシア経済危機に加え、ガット・ウルグアイ
ラウンド(UR)合意に基づく補助金付きチーズ輸出の削減約束により、中・東欧
諸国向けが停滞していることなどから、前年比7.4%減の約46万 5 千トンとなると
予想されている。

EUの主要チーズ生産国の生産量
mi-eu05.gif (3522 バイト)
 資料:ZNP
  注:各国は1月から10月までの生産量、EU15カ国は11月までの生産量。


主要生産国の動向は、輸出により明暗が分かれる

 主要生産国の98年 1 月〜10月の動向を見ると、96年および97年とEU最大のチ
ーズ生産国であったドイツは、ロシア向け輸出が大幅に減少しているものの、南
欧諸国向け輸出の好調が伝えられていることから、前年同期比0.9%増の135万 2 
千トンと、98年も引き続き最大の生産国になると見込まれる。また、かつて最大
の生産国であったフランスも輸出が好調なため、1.4%増の129万 4 千トンとなっ
た。EUのチーズ生産シェアの過半を占める両国は、国内消費も依然として順調で
あるとみられる。

 これに対して、オランダおよびイギリスでは、輸出の減少が生産に影響してい
る。特にオランダでは、前年まで実績のあったロシア向け輸出がほとんど行われ
ておらず、また、域内向け輸出も減少していることから、98年1月〜10月の生産
量は前年同期比7.8%減の54万 3 千トンとなった。


今年の生産量は前年並みとなる可能性も

 しかし、EUのチーズ生産の着実な成長を支えてきた域内消費にも、97年からそ
の伸びに陰りが見え始めてきていることが報告されており、その傾向が今後、ま
すます強くなると見込まれている。特に、ドイツやフランスなど北部ヨーロッパ
諸国の消費量は、飽和状態に近づくのではないかと指摘されている。

 域外向け輸出については、昨年10月からロシア向けチーズの輸出補助金が大幅
に引き上げられたことにより、再開されたことが伝えられている。EU委員会は、
今年 20 月に再びロシア向けのチーズ輸出補助金を引き上げた。しかし、同国の
経済状況からすると、同国向け輸出が97年水準に回復するとは考えにくい。また、
UR合意に基づくチーズ輸出補助金の削減約束実施の影響などを考慮すると、減少
することが予想される。さらに、95年度から実施されているUR合意による最低輸
入量(ミニマム・アクセス)約束に基づき、豪州やニュージーランドなど域外か
らのチーズ輸入が毎年増加している。このような状況から、ZMPは、これまで伸
び続けてきたEUのチーズ生産量は今年、前年並みにとどまる可能性もあると報告
している。

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