EU農相理事会、共通農業政策改革案に合意(EU)


市場政策から所得政策への一層の転換を図る内容

 EU農相理事会は 3 月11日、共通農業政策(CAP)の改革案を可決した。92年の
改革路線を踏襲し、市場政策から所得政策への一層の転換を図る内容となってい
る。

 改革案の合意に向けて 2 月22日に調整作業に入った農相理事会では、緊縮予算
を目指す蔵相理事会が予算の現状維持を打ち出したため、その実現方法が最大の
焦点となった。加盟国の激しい攻防の末、合意案の予算規模(2000〜2006年の累
計)は3,140億ユーロ(約41兆 8 千億円: 1ユーロ=133円)となり、現状維持案
の3,070億ユーロ(約40兆8千億円)に極めて近いものとなった。EU委員会および
各国の関係者は、この程度のかい離は各国首脳の理解を得られるものと踏んでい
る。

 EU委員会の本部のあるベルギーの首都ブラッセルでは 2 月22日、域内から農民
が終結し、より大きな補償を求め大規模なデモ活動が行われたが、この予算案は、
昨年提出されたEU委員会の案を上回ったものの、15億ユーロ(約 2 千億円)の増
額に留まった。

 この改革案は、 3 月24日から開催されるEU首脳会議で、地域振興補助政策など
と併せて最終的な検討が行われる。


酪農・牛肉分野:介入価格の15%、20%引き下げ、それに代わる奨励金の引き上げ・導入

 この改革案で合意された酪農分野および牛肉分野の主な改革内容は次の通りと
なっている。 

 1  酪農分野

  歳出削減を理由に改革の取り止めを主張するフランスおよびドイツに、イギ
リスを中心として大幅な改革を主張する通称ロンドンクラブが真っ向から対立し、
最終的には当初2000年度から開始される予定であった改革時期を遅らせることで
調整がついた。

 (1)改革期間

 2003年度〜2005年度(年度は 7 月〜 6 月)に行う。
 
(2)介入買い上げ

 この期間にバターおよび脱脂粉乳の介入価格を15%引き下げる。

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(3)生乳生産割当(クォータ)制度

@実施期間

 2006年度(年度:4月〜3月)まで延長する。ただし、2003年に将来のクォー
タ制度の検討を行う。

Aクォータ枠

 加盟国に一律1.5%増枠する。ただし、イタリア、スペインなど5カ国について
は、これを上回る増枠を行う。

(4) 奨励金

 クォータ制度の枠内で、乳量当たりで支払われる乳牛奨励金を新設する。

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(5)奨励金の追加支払い

 各加盟国の裁量により実施する。

 2  牛肉分野

 (1)介入買い上げ

 介入価格および発動(トリガー)価格を2000年 7 月から3年間で20%引き下げ
る。 3 年目以降は現行制度を廃止する。引き下げ後の価格を「牛肉基本価格」と
し、市場価格がこの103%を下回った場合に民間在庫補助を実施する。ただし、価
格暴落時に備え、緊急買い上げ措置を新設する。

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(2)奨励金

 単価を2000年から2002年まで段階的に引き上げる。と畜奨励金を新設する。

@雄牛特別奨励金

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 交付時期については、現行の10ヵ月齢および22ヵ月齢から 9 ヵ月齢および21ヵ
月齢に変更する(非去勢牛は、従来通り生涯 1 回の支払い)。スペイン、ポルト
ガルなど 7 ヵ国に国別の上限頭数を追加配分する。

A繁殖雌牛奨励金

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 国別の上限頭数は全加盟国に追加配分する。山岳地域が主要生産地の加盟国は、
この上限頭数とは別枠で未経産牛にも適用を可能とする。

B粗放化奨励金

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Cと畜奨励金

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D奨励金の追加支払い

 各加盟国の裁量により実施される。


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