ロシア向け食糧援助の実施に遅れ(EU)


99年上期までに援助終了を予定

 EUは、98年 8 月に経済危機が発生したロシアから食糧援助要請を受けて、98年
12月に両国間で食糧援助の了解事項に関する覚書の調印を行った。さらに、99年
 1 月20日には、援助物資に関する条件等を規定した覚書の調印を行い、食糧支援
実施に向けた手続きを整備した。

 これによると、援助物資は、小麦(100万トン)、ライ麦(50万トン)、米(50
万トン)、牛肉・豚肉(それぞれ枝肉ベースで15万トンおよび10万トン)、脱脂
粉乳( 5 万トン)で、援助総額は約4億ユーロ(約532億円、 1 ユーロ=133円)
となった。また、主な援助条件は次の通りで、援助物資は 5 回に分割して輸送す
ることとし、99年上期中にすべての輸送が完了することとしていた。

・ロシア政府による援助物資の売り渡し
・ロシア議会における援助物資管理委員会の設置
・EUによる会計検査等の権利
・援助物資の再輸出禁止および不正発覚時のEUによる物資差し止めの権利


ロシアのクレームにより輸送開始に遅れ

 しかし、 2 月にロシア側が、対象となる援助物資について品質および衛生基準
等の面で不十分であると指摘したため、2月上旬に予定されていた援助物資の調達
・輸送に関する入札(豚肉以外の物資については輸送条件に関する入札のみ)は、
一時中断されることとなった。

 今回、入札の実施が一時中断された第1回目の援助物資は、小麦(28万トン)、
ライ麦(10万トン)、米( 1 万5千トン)、牛肉(3万トン)、豚肉(3万トン)
および脱脂粉乳( 1 万トン)である。その調達方法については、豚肉を除く援助
物資は介入在庫から充当することとし、豚肉は一般市場からの買い入れ入札(た
だし、うち 5 千トンは民間在庫補助対象豚肉)により充当することとしていた。

 その後、EUとロシアの間で問題解決に向けた調整が行われた結果、当初 2 月に
開始されるとみられていた援助物資の輸送は、 3 月から開始されることとなった。


EUは豚肉などの需給改善を期待

 今回の食糧援助は、EUにおける畜産物需給の改善効果が期待されている。特に、
豚肉については、多くの加盟国での増産などに伴う需給の緩和により記録的な価
格の低迷が続いており、その追加対策が検討されている。こうした状況の中、昨
年11月にロシア(同国は、EU最大の豚肉輸出先)向けに限定した豚肉の輸出補助
金を大幅に引き上げたEUは、 2 月15日から同国向け豚肉調製品の輸出補助金をさ
らに引き上げた。

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