豪州、動物愛護団体が生体家畜輸出の規制強化を要求


政府、生体牛輸送事故に関する業者処分を発表

 連邦政府は昨年発生した生体牛の海上輸送中の事故に関し 2 月12日、輸出業者
に対する処分を発表した。これは、昨年060月にウエスタンオーストラリア州から
中東に向けて出港した運搬船シャロレー・エクスプレスに搭載された生体牛1,254
頭のうち、最終的に400頭以上の牛がへい死した事件に関するものである。

 政府は、輸出業者のウェラード社に対し、今後北半球で夏を迎える 5 月 1 日か
ら10月31日までの期間、南緯26度以南の豪州の港から北アフリカや中東諸国向け
の生体牛輸出を禁止するとの勧告を行った。ただし、この処分は、政府と生体家
畜輸出業者の代表団体であるライブコープによって、ウェラード社が業界基準を
実行できると判断されるまでの間と限定されている。


事故原因は熱暑ストレスの可能性

 今回の処分に当たり、政府は調査の結果、長時間にわたった高温多湿による熱
暑ストレスが原因だった可能性が高いとしながらも、すべての要因を特定する確
証は得られなかったと結論付けている。また、輸出業者に対する処分については、
輸出業者のいかなる落ち度も証明できなかったことから、生体家畜輸出業者とし
てのライセンスをはく奪するには至らなかったと説明した。


動物愛護団体、政府勧告を非難

 これに対し、動物愛護団体の 1 つである動物愛護協会(RSPCA)は「輸出業者
は何ら法的な処罰を受けておらず、政府勧告はその場しのぎのための取り繕いに
過ぎない」として、今後も、農場から目的地までの家畜の取り扱いに関して法的
な責任が明確化されるまで、生体輸出に反対を続けると非難を強めている。


年初の事故再発で、動物愛護の気運が高まる

 今年 1 月27日には、ダーウィンからインドネシアに向かった運搬船テンバロン
に搭載された牛1,011頭のうち、換気装置の故障とみられる原因により、800頭以
上がへい死する事件が発生した。現在、管理記録など事件の詳細について海事安
全局により調査中であるが、シャロレー事件後、直ちに輸送規則が強化されたに
もかかわらず、わずか半年後の惨事の再発に、動物愛護派は態度を硬化させてい
る。

 少数野党の民主党はRSPCAに歩調を合わせ生体輸出の全面禁止、最大野党の労
働党は再発防止策の検討を要請している。また、豪州獣医協会は、テンバロン事
件について閣僚レベルで調査を実施するよう首相に求めるなど、議会でも動物愛
護の気運が高まりつつある。


生体輸出の規制強化が課題

 動物愛護の観点から、休息時間や連続輸送時間などが既に事細かに定められて
いるEUと比較すると、現在の豪州の家畜輸送に関する規制は、船上での頭数密度
や輸送中のデータの管理義務などの大枠が示されているに過ぎない。

 豪州からの家畜輸出は年間 4 億豪ドル(約308億円: 1 豪ドル=77円)を超え、
輸出の増減は農家経済にも少なからぬ影響を及ぼしているだけに、長期的な存続
に向けて、規制強化は避けられないものとみられる。

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