豪州、米国のラム輸入制限の動きを警戒


米国、ラム輸入増への対抗策実施を表明

  2 月 9 日、米国の国際貿易委員会(ITC)は、豪州およびニュージーランドか
らの輸入ラムの増加が国内市況に悪影響を及ぼしているとして、対抗策を講ずべ
きとする答申を満場一致で採択した。豪州側は、これに対して輸入制限措置など
を想定し警戒姿勢を強めている。


米国内のラム市況低迷が背景

 近年、豪州およびNZからの対米ラム輸出は好調に推移しており、これまで国際
羊毛市況が長期的に低迷してきたことから、両国の羊産業にとって、今後に期待
が持てる貴重な輸出分野となっている。

表:豪州およびNZの対米国ラム輸出量の推移
ram.gif (2268 バイト)
 資料:豪州統計局(ABS)
  注:豪州は暦年、NZは当該年5月までの年度

 一方、米国側から見ると、輸入ラムが国内供給全体の 2 割強を占め、かつ、そ
の97%は豪州・NZ産であるため、牛肉や豚肉など他の食肉とともに、国内市場を
めぐる主要な競合相手となっている。こうした中、最近の米国内のラム市況は大
幅に下落し、低迷していることから、米国の羊業界は、両国からの輸入ラムの増
加が市況悪化の原因として、 1 月、ITCに対し通商法第201条に基づく対抗措置を
講ずることを要求した。

 これに対し、豪州の食肉輸出促進団体ミート・アンド・ライブストック・オー
ストラリア(MLA)は、@米国内でのラムの市況悪化は他の食肉との競合激化が
大きな要因であること、A豪州のラム生産は今後大幅な増加を見込めず、これ以
上の脅威とはならないことを訴えるなどして、その動きをけん制していたが、今
回の決定を押し止めることはできなかった。


米ラム輸入業界は豪州側に加担

 米国内のラム輸入業界からは、今回のITC決定を疑問視する声も上がっている。
カリフォルニア州の大手ラム輸入業者は、@米国羊産業が長年にわたって羊毛法
(54年)による補助金に支えられ、既に競争力を失っていること、A米国の消費
者が豪州・NZ産の牧草肥育ラムを好んで選択していることなどを指摘し、輸入制
限措置などは取るべきでないとのコメントを発表している。


豪州・NZ、成り行き次第では強硬な抗議

 ITCは、今回の決定を踏まえて、2月25日に実施された業界ヒヤリングからの具
体的な案を取りまとめた上で、4月5日までにはクリントン大統領に意見書を提出
するとしている。これを受けた大統領は、事実関係を調査した上で、60日以内に
具体的な対抗措置を決定することとされている。今回のITCの決定には、北米自由
貿易協定(NAFTA)加盟国であるメキシコとカナダを対抗措置の対象から除外す
る旨が含まれており、このことは事態をさらに複雑化させることも考えられる。

 仮に、ITCが、関税割当などの輸入制限措置を大統領に提言した場合には、輸出
国側である豪州・NZが強硬に抗議することが予想される。

 豪州は、一昨年来、国内豚肉業界が輸入増加に伴う市況低迷に見舞われたにも
かかわらず、業界の要請に屈することなく輸入制限措置を適用しなかった経緯が
ある。このため、今回、米国に対しては一歩も引かない構えであり、今後の成り
行きが注目されている。

元のページに戻る