導入が検討される家畜収入保険制度(米国)


次第に高まる農業保険制度の重要性

 80年代から90年代初めにかけて、自然災害による農家の経済的な損失について
は、その都度、議会が一連の緊急災害支援対策を成立させることにより対処され
てきた。加えて、不足払い制度などの伝統的な農業所得対策が講じられてきたこ
とから、農家の農業保険への加入率は低く、同制度は自然災害による経済的損失
をカバーする主要な支援対策とはなり得なかった。

 しかし、94年連邦作物保険改革法により、作物保険制度と災害対策が一本化さ
れ、農家の作物保険への加入促進が図られた。その柱である大災害作物保険プロ
グラム(CAT)では、連邦政府が保険料を負担することにより、農家はわずかな
手数料を支払うだけで、作物ごとの壊滅的な災害による損失が一定水準(平年収
入の 3 割程度)まで補てんされることとなった。また、関連する制度において、
農家は追加保険料(政府補助あり)を支払えば、保証水準を高くすることもでき
る。

 96年農業法では、不足払い制度と減反計画の撤廃により、穀物などの価格変動
の拡大が見込まれたことから、価格変動を含めた収入リスクに対応するためのパ
イロット事業として作物収入保険(CRC)などの収入保険が導入された。さらに、
98年には、農産物価格の低迷や自然災害による農家収入の減少に対処するため、
総額60億ドル(約 7 千 1 百億円:1ドル=118円で換算)に及ぶ農家緊急支援対
策が成立した。この対策の中で、USDAは、農業保険制度への加入を促進するため、 
4 億ドル(472億円)を農業保険制度改革の頭金とし、99年産作物に係る保険料に
対して助成することにより、農家負担を30%削減することとしている。


畜産物価格が低迷する中、膨らむ家畜収入保険制度への期待

 このような中、米農務省(USDA)は2月1日、2000年度予算案の発表と併せて、
農業保険制度の改革案を発表した。今回の制度改革案の発表に当たって、USDAは、
これまでの制度上の問題点を踏まえ、@加入促進(加入者の最大化)、A包括的
な保証、B市場原理の活用、C柔軟な対応、D農業者(加入者)および納税者に
とってのコスト最小化の 5 つを原則として掲げている。

 また、以上のような原則に基づき、政府は議会に対し、農家のセーフティネッ
トを強化するため、次のような提案を行うこととしている。

 @農家の多様なニーズに対処するため、農業全体の生産と収入をカバーする保
  険の提供
 A収入のわずか 3 分の 1 以下しか補償しないCATなどについて、その保証水準
  の引き上げ
 B農家に対し、より保証水準の高い保険への加入奨励
 C複数年にわたる災害による損失を補償する保険の提供
 D農業部門で最大の生産額を誇るにもかかわらず現行制度では対象とされてい
  ない畜産を対象とする規定の改正

  このような提案を受けて、早くも民間の保険会社が家畜収入保険を提案する一
方、酪農・乳業分野では、議会に提案するため、乳業者と生産者が共同で粗収益
保険の概念の開発を進めている。家畜収入保険制度に対しては、畜産物価格の低
迷や乱高下に悩む畜産関係者などから大きな期待が寄せられている。


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