◇絵でみる需給動向◇
ミート・アンド・ライブストック・オーストラリア(MLA)によると、98年1〜 10月の生体牛輸出は、前年同期を43.7%下回る42万 7 千頭となった。 豪州における生体牛輸出は、90年代以降、経済成長を続ける東南アジア向けを 中心に年々拡大し続け、97年5月には月間過去最高の10万頭を超えるまでに急拡 大した。しかし、その後、97年7月のタイバーツ急落に端を発した東南アジア各 国通貨の連鎖安、経済危機により、輸出は減少の一途をたどっている。 ◇図:生体牛輸出の推移◇
主要な輸出市場の動向をみると、昨年まで総輸出量の約半分を占めていたイン ドネシア向けは、経済危機によりほとんど輸出が停止した状況にあり、98年1〜 10月の輸出量は 1 万頭と前年同期の 3 %にまで激減した。このため、フィリピ ン向けが前年同期比39.5%減の13万5千頭であったものの、同期間の最大の輸出 先となった。続く第020位の市場はリビアで、前年同期比45.6%増の 8 万9千頭 に、第 3 位は前年の 5 位からランクアップしたエジプトで、前年同期のおよそ 2倍の 8 万 1 千頭となった。これまでの輸出拡大のけん引役であった東南アジ ア向けが軒並み減少する中で、輸出先開拓の結果、中東および北アフリカ向けの 増加がみられる。この他、昨年まではほとんど輸出されていなかったメキシコを はじめとする中・南米向けが拡大基調にあり、98年1 〜10月で 2 万 1 千頭輸出 された。 ◇図:生体牛輸出の推移◇
輸出される生体牛の用途別をみると、98年1〜10月では全体の55%をと畜用が 占めており、大幅な輸出増加がみられた中東および北アフリカ向け輸出の大半が と畜用牛となっていることが背景に挙げられる。 一方、これまでインドネシアを中心に東南アジア向けに輸出されていた肥育素 牛の割合は44%となり、97年の79%から大きく縮小している。
MLAでは、今後の生体牛輸出の見通しについて、経済状況などからインドネシア 向けを中心とした東南アジア向けの早期回復は難しいとしながらも、リビアやエ ジプトなどの新興市場向けは、引き続き増加を見込んでいる。さらに、メキシコ 向けについては、現在、輸出地域が限られているため、今後、衛生条件を克服し て更なる拡大を目指したいとしている。 国内では、動物愛護団体からの要請を受け98年7月に家畜輸送規則が改正され たことにより輸送環境が厳しくなっており、関係業界は新興市場への輸出拡大や 新しい市場の開拓で活路を開きたいとしている。
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