◇絵でみる需給動向◇
タイブロイラー加工輸出協会が取りまとめた98年10月の鶏肉の輸出量(速報値) は、前年同月比14%増の 2 万1,430トンとなった。このうち、冷凍鶏肉は同19% 増の1万6,730トン、鶏肉調製品は前年と同水準の4,700トンとなった。特に、EU 向けの輸出量が同8%増の5,503トンに止まり、これまで同5割を超える水準で推 移していた伸び率が、大きく鈍化したことが注目される。これにより、第3四半 期まで大きな伸びを示した輸出は、8月の62%増をピークに、徐々に低下傾向で 推移している。 その結果、98年 1 月〜10月の鶏肉の輸出量は、前年同期比45%増の22万 3 千 3百トンとなり、そのうち、冷凍鶏肉が同44%増の12万1千3百トン、鶏肉調製 品が同46%増の4万8千3百トンとなった。
これまでバーツ下落の恩恵でタイの鶏肉輸出は97年末以降大幅に増加してきた が、1ドルに対し40バーツを超えていた為替レートは、最近では36バーツの水準 まで回復し、輸出価格の大きな上昇要因となり、輸出増大の足かせとなっている。 また、ロシアの経済危機が、ポーランド、ハンガリーなどから同国への鶏肉の輸 出を減少させ、ヨーロッパ域内の鶏肉の供給が過剰となっているため、これがタ イからEUへの輸出の減少要因ともみられている。これらの理由により、今後のタ イの鶏肉輸出には、黄色信号が点灯し始めているとみられている。
現在、ブラジルから日本に輸出されているサイズ分けされたもも肉の輸出価格 は、トン当たり2千ドルとなっている。これを、サイズ分けされていないタイ産 もも肉の同価格と比較するため、トン当たり100〜150ドルのサイズ分け料金をブ ラジルの同価格から差し引くと、同1,850〜1,900ドルとなりタイと同水準となっ ている。また、ブラジルのもも正肉などは、肉の面積が大きいこと、飼料に魚粉 を使用していないため臭いが少ないことなどから実需者に人気を得ている。さら に、東南アジア諸国の通貨と比較して、割高となっていたブラジル通貨レアルの 実勢相場がかなり下落しているため、輸出競争力が増してきているとともに、タ イより安い労働賃金のメリットを生かして、タイの輸出価格より引き下げること が可能となってきている。 このような情勢のため、タイの鶏肉輸出価格は、中国に対しては有利な立場に あるものの、ブラジルの攻勢により引き上げられない状況となっている。
中国の鶏肉加工処理業者は、輸出の拡大のために鶏肉を生産したくとも、むね 肉の過剰在庫が足かせとなり、生産を制限せざるを得ない状況にあるといわれる。 この背景には、大量にむね肉を輸出するに当たって、日本の需要がもも肉中心で あること、タイとの競争もありこれ以上もも肉への価格転嫁ができないため、採 算を度外視したむね肉輸出価格の大幅な引き下げが困難であること、むね肉需要 の高いEUへの輸出は、依然として中国からEU向けの輸出工場が認定されていない ため難しいことがある。 このため、中国から日本への輸出は、@輸出価格が、タイのトン当たり1,900ド ルと比較しても、かなり割高となっていること、A先の洪水による被害で鶏肉の 生産が減少し、国内の需給がひっ迫する見込みであること、Bこれまで香港経由 で中国に再輸出されていたとみられる米国産などの鶏肉が、中国当局の不適正取 引取り締まり強化から大幅に減少し、代替として国内産鶏肉の需要が増加すると みられることなどから、日本への輸出量は減少傾向で推移するものとみられてい る。
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