EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○脱脂粉乳価格が低下


8月から5.1%の低下

 EUの脱脂粉乳価格は、98年 2 月以降ほぼ横ばいで推移していたが、 8 月を境
に低下傾向となっている。指標価格の1つであるドイツの11月の工場渡し価格は
前月同の374マルク(約28,100円:1マルク=75円)/100kgとなったものの、8
月の394マルク(約30,000円)から5.1%低下(前年同月では9.2%下回る)した(左
図参照)。輸出依存度の高いオランダやフランスの工場渡し価格もほぼ同様の値
動きを示している。また、この値動きは、夏から冬にかけて価格が上昇傾向とな
る例年とは違った動きを示している。

◇図:EUの脱脂粉乳の域内価格と介入在庫量の推移◇


生産増および介入買上げ終了が主因

 この原因は、98年に入り減少していた脱脂粉乳生産量( 1 月から 7 月までの
生産量は、前年同期比8.4%減の約69万 8 千トン)が、8月から一転して前年同
月に比べ増加したことが挙げられる。 8 月および 9 月の生産量は、前年同期比
8.0%増の約15万 6 千トンとなった。これは、これまでチーズ生産に仕向けられ
ていた生乳の一部が、EU最大のチーズ輸出先であるロシア(97年は前年に比べほ
ぼ倍増の19万 5 千トン)で 8 月に通貨急落による経済危機が起こったことなど
により、脱脂粉乳に仕向けられたことにある。また、3月から 8 月まで生乳生産
の増加に伴い行われる脱脂粉乳の介入買上げが終了したことが、価格の低下に一
層の拍車をかけた。

 さらに、@EUの主要用途である子牛の飼料向け需要が、96年3月に発生した牛
海綿状脳症(BSE)対策の一環である子牛のと畜奨励事業などの進展や、近年、全
乳哺育の傾向が強まっていることにより低迷したこと、A97年に好調であったメ
キシコ向けなどの域外向け輸出が、98年に2度の輸出補助金の引き上げ(現在は
過去10年間で最も高い82.5ECU(約12,200円:1ECU=148円)/100kg)を行った
にもかかわらず、脱脂粉乳の国際需給が緩和傾向にあること(98年11月の国際価
格は、前年同月を21.9%下回る130米ドル(約15,900円:1米ドル=122円)/10
0kg)により、停滞していることも影響している。

 このような状況から、98年1月末で13万トンであったEUの脱脂粉乳の介入在庫
量は、11月末には前年同月比45.7%増の20万 4 千トンと大幅に増加した。


今後は域内需要がカギ

 このように、これまでのEUの脱脂粉乳市場をめぐる状況はあまり芳しくなかっ
た。しかし、域内需要については、EU各国の牛肉消費がある程度回復し、子牛の
と畜奨励事業の補助金単価が12月から引き下げられたことなどにより、@子牛の
飼料向け需要の回復が期待されていること、A現在の脱脂粉乳価格が低価格であ
ることから、配合飼料会社や食品会社が長期契約で購入する見込みがあることな
ど、市場が好転する材料が挙げられている。したがって、EUの脱脂粉乳価格は、
今後、域内需要の動向にかかっていると言える。


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