◇絵でみる需給動向◇
ドイツ市場価格情報センター(ZMP)の推計によると、世界の総生乳生産量(98 年では約4億8千万トン、牛乳のみ)に占めるニュージーランドのシェアは、わ ずか2%にすぎない。しかし、同国の生乳生産のうち95%以上が加工用に向けら れ、その大半が乳製品として輸出される完全な輸出依存型の国であることから、 世界の乳製品貿易に占めるウェートはかなり高い。
ニュージーランドの主要乳製品の輸出状況をみると、90年代以降、いずれの製 品についても輸出シェアを拡大しており、単一国としては最大の乳製品輸出国と なっている。とりわけバターの輸出(バターオイルを含む)については、93年に それまで最大の輸出国であったEUを抜いて首位となり、97年には世界の総生産量 の37%を占めた。また、脱脂粉乳およびチーズについても、それぞれ同15%、20 %のシェアを占めている。 ◇図:バター(バターオイルを含む)の主要輸出国◇ ◇図:脱脂粉乳の主要輸出国◇ ◇図:チーズの主要輸出国◇
ニュージーランド産の乳製品が世界で圧倒的な競争力を持つ背景には、同国の 生乳生産が草地の生育に合わせた合理的な季節生産であることが挙げられる。通 年放牧による生乳生産が行われ、設備投資にかける費用が少ないことから、他国 に比べ生産コストを低く押さえることが可能となっている。 ニュージーランド農林省(MAF)の調べによる主要国の生乳生産コスト(指数)の 比較をみると、ニュージーランドのコストは日本の 4 分の1以下、EUの 2 分の 1以下と、他の主要輸出国に比べ極めて低い水準にあることがわかる。また、同 じオセアニアに属し、同様に放牧型酪農を基本とする豪州と比べても、補助飼料 としての飼料穀物の給与が少ないことなどから、生産コストは豪州の約7割に押 さえられている。 生乳生産コストの各国比較 資料:ニュージーランド農林省調べ 注:米国はカリフォルニアの場合 今後も乳製品輸出の拡大を目指すニュージーランドにとって、少なくともガッ ト・ウルグアイラウンド(UR)合意による輸出補助金の削減約束は、今後とも世 界市場における同国のシェア拡大に寄与することは衆目の一致するところであろ う。
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