◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)によると、11月の全生乳の農家販売価格(飲用規格乳および 加工用規格乳の農家販売価格の加重平均)は、前年同月比22.6%高の17.90ドル/ 100ポンド(48.14円/kg: 1 ドル=122円で換算)となった(左図参照)。これ は、過去最高であった前月を30セント上回るものである。生乳生産の伸び悩みに よる加工用規格(グレードB)乳価の上昇とこれに影響を受けた飲用規格(グレ ードA)乳価の上昇が要因となっている。 飲用規格乳の最低取引価格は、カリフォルニア州を除くほとんどの地域で、連 邦ミルク・マーケティング・オーダー(FMMO)制度に基づいて定められている。FM MO制度では、ミネソタ、ウィスコンシン両州の加工用規格乳価を基に、飲用規格 乳に適用される用途別乳価の算定基礎となる基礎公式価格(BFP)が毎月定められ る。このため、飲用規格乳価は、ほぼ加工用規格乳価に連動して動いている。ち なみに、11月のBFPは、過去最高となる前年同月比29.9%高の16.84ドル/100ポン ド(45.29円/kg)となった。BFPは98年に入り大きく変動しており、98年の最低 である5月と最高である11月を比較すると、その差は実に5.96ドルに達している。 ◇図:BFPと主要乳製品の卸売価格の推移◇
生乳生産の約 2 分の 1 がチーズ生産に仕向けられていることから、チーズの 価格動向は他の乳製品と比較して最も大きな影響を加工用規格乳価に与えている とみられる。11月のチェダーチーズの卸売価格は、前年同月比31.2%高の188.7セ ント/ポンド(507円/kg)となり、過去最高を更新した。チーズ消費が順調に伸 びる中、第3四半期の生乳生産減少の影響を受けてチーズ生産が伸び悩んだこと がチーズ価格高騰の要因の1つとなっている。USDAでは、チーズの卸売価格は生 乳生産の季節的拡大が始まる年明けまでに35〜40セント下落するとみており、こ の結果BFPも99年第1四半期には、13ドル/100ポンド前後の水準に落ち着くと予 測している。
一方、バター価格は、チーズとは対照的に大幅に下落している。バターの卸売 価格に大きな影響を与えるシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の現物取引価格 (グレードAA)をみると、275.7セント/ポンド(742円/kg)の最高値を記録し た 9 月をピークに急落し始め、11月は前月より66.4セント安、前年同月比9.8% 高の174.5セント/ポンド(469円/kg)となった。週別にみると、11月の最終週 には、121.75セント/ポンド(327円/kg)にまで下落している。この要因として は、@ 9 月から季節的なバター生産の増加期に入ったこと、 Aバターの減産傾 向は続いているものの、価格高騰の影響で前年同月と比較して10月のバター生産 がやや回復したこと、Bニュージーランドなどからのバター輸入が、関税割当枠 内、枠外ともに例年に比べ増加していること(バター輸入:98年のミニマムアク セス数量5,777トン、枠内税率12.3セント/kg、枠外の輸入に対してはさらに高率 の関税が課せられる)などが挙げられる。 ◇図:バターの生産量と増減率◇
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