イギリス全土から牛肉等の輸出を解禁(EU)
実際の輸出再開は、現地調査を待って決定
EUは11月25日、イギリスのグレートブリテン産の牛肉などの輸出の解禁を決定
した。同国産牛肉等は、96年 3 月に牛海綿状脳症(BSE)対策として輸出を禁止
されたが、98年の春には北アイルランド産が解禁されており、今回の決定により
イギリス全土からの輸出が解禁されることとなった。ただし、実際に輸出が可能
となる期日は、EU委員会の現地調査の結果を待って決定される。
2 つの対策が解禁の重要な基盤
1 肉骨粉飼料の使用禁止措置の遵守
96年 8 月1日に、BSEの主要な伝搬経路である肉骨粉を飼料に利用することを
禁止した。今回の解禁は、感染源が断ち切られたと考えられるこの日以降生まれ
た牛を対象としている。このため、解禁措置は、「生年月日に基づく輸出措置」
("Date Based Export Scheme"、以下「DBES」という)と呼ばれる。
2 BSE患畜の産子の処分
BSEは、母子感染が成立するとされている。このため、解禁対象となる96年8月
1日以降に生まれた牛で、母牛がBSEにかかった牛は、今後すべて殺処分すること
を決定している。これまでは自主的に実施されており、98年11月上旬までに737頭
が処分された。
今回定められた、DBESの主要な条件は次の通りである。
1 解禁措置の施行前に、BSE患畜の産子の処分措置を完了すること。その後該当
する産子が判明した場合は直ちに処分すること。
2 解禁対象品目
牛肉、牛肉製品など。
3 DBES対象と畜牛
(1)96年 8 月 1 日以降に生産されたものであること。
(2)由来牛群および母牛までさかのぼって履歴を追跡できること。
(3) 6 カ月齢から30カ月齢であること。
(4)母牛はBSEにかかったり、その恐れがなく、対象牛の出生後6カ月以上生存
していたこと。
4 個体識別およびその管理
対象牛は、耳標により個体識別がなされていること。識別番号は出生からと畜
に至るまでの全履歴とともに、牛パスポートあるいは政府のコンピュータシステ
ムに記録されていること。
5 その他
(1)と畜場はDBES対象と畜牛以外の牛をと畜しないこと。ただし、北アイルラン
ドの場合、既に輸出が解禁されているBSE清浄群からの牛のと畜は差し支えな
い。DBES対象牛のと畜場である旨の政府の指定が必要である。
(2)骨を除くとともに、主要なリンパ節を除去すること。
輸出再開は99年 4 月以降になる見込み
EU委員会は、今後、現地調査を実施し、これらの条件が満たされていることを
確認した上で、輸出を再開できる期日を決定する。イギリス食肉家畜委員会(ML
C)は、BSE患畜の産子の処分措置を完了することが必要なため、輸出再開は99年
4月以降になる見込みであるとコメントしている。
なお、北アイルランド産牛肉等は、同地域で、古くからコンピュータによる個
体識別システムが導入されており、過去長期間のBSEの疫学状況が確実に把握でき
ることから、98年 3 月に輸出解禁が決定され、 6 月から実際に輸出が再開され
た。
ポルトガル産牛肉等は輸出を禁止
一方、EUは10月28日、ポルトガルからの生きた牛、牛肉などの輸出を禁止した。
これは、同国ではBSEの発生が増加しており、また、EU委員会の査察でBSE対策の
不備が明らかになった結果、取られた緊急防疫対策である。BSE関連の輸出禁止措
置としては、イギリスに次いで 2 カ国目である。
今回輸出禁止対象となるのは、生きた牛、牛受精卵、牛肉、牛肉製品、ほ乳類
動物から生産した肉骨粉やこれを含む飼料などで、EU域内だけでなく第三国への
輸出も禁止される。このうち、牛肉および牛肉製品の輸出禁止措置は99年8月1
日までとされている。同国では、98年に入ってBSEの発生件数が増加している。10
月初旬までの発生件数は66件で、97年の30件を既に大きく上回っており、さらに
増加することが予測されている。
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