EU委員会がロシア向け食糧援助を提案(EU)


総額で 4 億 7 千万ECU

 EU委員会は11月9日、ロシアに対する食糧援助を行うことを外相理事会で提案
した。同国では、98年8月に発生した通貨(ルーブル)下落による経済危機およ
び97年収穫量の約半分と言われている農作物の不作により、今後の食糧不足が懸
念されている。今回の動きに先立って、11月6日には米国がロシアに対する食糧
援助(310万トン)に合意している。

 この提案によると、援助物資は穀物155万トン、食肉25万トンおよび脱脂粉乳5
万トンで、総額4億7千万ECU(約700億円、 1 ECU=148円)となっている。対
象品目および数量は次の通りであり、これらを97年におけるロシアの輸入量と比
較すると、牛肉(97年の輸入量:65万トン)、豚肉(同:44万4千トン)とも、
約23%に相当する。


 資料:EU委員会、USDA「World Market and Trade」
 注1:食肉の援助数量およびロシアの食肉生産量は枝肉換算ベース。
  2:米の生産量は、旧ソ連邦全体の数値。


98年12月中に正式合意へ

 今回の援助物資の調達は、豚肉については市場から購入し、その他の品目につ
いてはEUの介入在庫から充当して行われるものとみられる。また、援助の方法お
よび条件として、援助物資はロシアの国内市場価格で販売することとし、その販
売利益を用いて基金を創設する。この基金はEUおよびロシア政府が共同管理し、
生活困窮者対策に利用されることとなっている。このためEUでは、援助物資がそ
の目的通り適正にロシアにおいて消費されること(物資の再輸出などの禁止)に
ついて、何らかの保証をロシア政府に対して求めることとしている。

 この提案はEU農相理事会において大筋で合意されており、98年12月中にロシア
政府からの公式な食糧援助要請を受けて、外相理事会で正式合意する予定である。
なお、これに係る規則制定後に具体的な食糧支援体制を整備する必要があること
から、食糧支援の実施は99年 1 月以降になるものとみられている。


農業関係者は市況の回復を期待

 イギリス食肉家畜委員会(MLC)によれば、EUの97年における域外向け輸出量の
うちロシア向け比率は、牛肉が枝肉重量ベースで41%、豚肉が製品重量ベースで
32%などと主要な輸出先となっている。このため、ロシア経済危機による輸出機
会の減少は、域内における農産物の市場価格の下落、在庫量の増加といった悪影
響を及ぼしている。EUの農業関係者は、今回の食糧援助により在庫量の減少が見
込まれることから、農産物市況の回復が図られるのではないかと期待している。


元のページに戻る