豪政府諮問機関、豚肉業界救済の具体策を答申


豚肉価格低落に奔走する豪政府

 財務省管轄下の政府諮問機関である生産性委員会は、11月25日、大幅な価格低
落に見舞われた豚肉業界への救済策を政府に答申した。

 昨年末以来、豚肉価格が過去最低と言われる水準まで低落したため、業界から、
輸入の停止措置を含む抜本的な救済策が求められていた。これを受け、豪州政府
は本年 6 月、流通合理化補助などを含む9 百万豪ドル(約 7 億円:1豪ドル=
79円)の緊急対策を実施した。

 またその一方で、政府は生産性委員会に対し、世界貿易機関(WTO)規則に基づ
く輸入セーフガードの適用の可否を諮問していた。このため、同委員会は、@国
産豚肉と直接競合した輸入産品の特定、A影響を受けた国内業者の範囲の特定、
B豚肉輸入増加の事実の検証、C国内産業が被った被害の検証、D被害の原因が
輸入の増加にあったことの検証、E業界への救済対策、に対する詳細な答申を政
府に提出した。


競合相手国や影響を受けた業者などを特定

 同委員会により提出された答申によると、まず、国産豚肉と直接競合した輸入
産品はカナダ産の輸入豚肉であったとし、影響を受けた国内業者は、肉豚生産者、
と畜業者および豚肉処理加工業者であると報告している。また、95/96年度に約
 3 千トンであった豚肉輸入量が、96/97年度以降は 8 千トン以上に急増してい
ることや、主要な輸入品目である骨付きもも肉の国内流通シェアが、同時期に6
〜7%から17〜22%に急増したことから、豚肉の輸入が急激に増加した事実が実
証できるとしている。

国産豚肉の低落は輸入急増が要因との結論に

 国内業界が受けた被害の検証については、具体的な検証方法が定められていな
いため困難であるとしながらも、97年10月から98年6月にかけて、国内の豚肉価
格が低迷したことや、豪州豚肉協議会の調査結果により、肉豚生産者の経営収支
が96/97年度の黒字(+7.6%)から97/98年度は赤字(▲3.5%)に転落してい
ることを挙げて、立証可能であると報告している。さらに答申では、これら被害
の主要な原因は豚肉輸入の急増にあったと結論付けており、その理由としては、
この間の国内豚肉生産からの影響は少なかったこと、豚肉輸入急増以外に昨年10
月以降の大幅な価格低落を説明できる要因は存在しなかったことを挙げている。
加えて、同委員会が外部に委託した種々の調査の結果も、この結論を否定するも
のではなかったとしている。


セーフガードの適用を認めつつも、別の施策を提言

 以上のことから、同委員会は、WTOに規定された輸入セーフガードを適用するこ
とは可能であると結論しており、仮に適用する場合には、初年度10%、次年度5
%、 3 年目以降は無税とする一律関税の適用が適当としている。

 しかしながら、輸入セーフガードの実施は国際間の補償問題を招く恐れがあり、
かつ、豪州の自由貿易推進の立場にもマイナスの影響を及ぼすと指摘し、これが
最も適当な施策かどうかは疑問であるとした上で、被害を受けた業者への直接補
償や輸出奨励などの施策を実施することが望ましいと提言している。

 今後、政府は、この答申をもとに具体的な対策を協議することとなるが、この
問題は、10月に実施された連邦総選挙の争点の一つともなっただけに、慎重な対
応がなされるものと思われる。


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