豚肉・牛肉以外は不振の畜産物輸出(中国)


1 〜10月までの輸出額は1.3%増も、10月は大幅にマイナス

 国家税関総局が発表した98年の貿易概況によると、中国の1〜10月の輸出額は
前年同期比1.3%増の1,488億ドルとなった。しかし、10月単月では前年同月比17
.3%減の147億3千万ドルとなり、8、9月に続く 3 ヵ月連続の減少となってい
る。中国では近年の経済の急成長による生産増により輸出志向が高まったが、中
国の最も重要な輸出市場である、日本を含むアジア地域の通貨・金融危機の影響
から、輸出不振の様相を強めつつある。これに対して中国は、対米、対欧州輸出
を強化することによって輸出減に歯止めを掛けようとしており、さらに、現在17
%の増値税率*をさらに引き下げることで輸出てこ入れを図る案も取り沙汰され
ている。なお、関税総局関係者は輸出減速の影響は第4四半期以降、来年にかけ
て現れ、近年の輸出が好調だっただけにその影響の度合いは予測し難いとしてい
る。

(注) 流通段階でかかる付加価値税で、輸出製品に対しては 9 %が還付される。


畜産物輸出、豚肉、牛肉以外は減少

 こうした状況の中で、主要畜産物、主要飼料穀物の輸出動向は次のとおりとな
っている。

98年1〜10月 主要畜産物などの輸出動向

 資料:中国通関統計

 目立った動きとしては、かつて急速に拡大し、その後も好調を維持してきた鶏
肉など家きん肉輸出の不振が、97年以降深刻化していることが挙げられる。その
一方で、生産急増で供給過多となった豚肉の輸出が急増した。また、牛肉の輸出
増については、国内需要も増大しているものの、近年の生産増によって輸出余力
が生じたものと思われる。

 畜産物生産に大きく影響を及ぼすトウモロコシについては、3年連続の豊作に
よって国内需給は軟化しているものの、世界的な豊作基調の中で輸出が伸びない
ものと考えられる。


EUへの鶏肉輸出再開がカギ

 近年の畜産物輸出拡大をけん引してきた家きん肉輸出が不振となっている背景
には、その大部分を占める対日輸出において、他の鶏肉輸出国との競争が激化し
ていることが挙げられる。   

 タイは、通貨下落によって輸出競争力が増したことに加えて、現在、中国が検
疫上の制約から鶏肉を輸出できないEUへ「むね肉」を輸出することによって、
日本向け「もも肉」価格を安価にできる利点を持つ。また、米国も「むね肉」の
国内販売価格が高い分、日本向け「もも肉」を安価にできることから同様に手強
い競合国となっている。中国でも基本的には「もも肉」が好まれるため「むね肉」
の在庫が増加していると伝えられており、EU市場への早期の輸出再開が望まれて
いる。


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