香港へ豚肉を試験輸出(マレーシア)


通貨危機の影響でシンガポールへの輸出が不調に

 マレーシアでは、98年の春先から市場に出荷される生体豚の頭数が、主産地の
養豚農家を中心に減少したことから、豚の農家販売価格が大幅に上昇した。この
要因としては、豚のへい死や子取り用めす豚の繁殖障害の増加、通貨危機の影響
による経営難、また、畜産公害問題に適切に対処できない多くの中小養豚農家の
離農などが挙げられている。

 しかし、 8 月までは 1 kg当たり4.7リンギ(約146円:1リンギ=約31円)の
高値で推移してきた農家販売価格は、シンガポールにおける経済の停滞、観光客
の減少などによる豚肉消費の低迷から、同国へ輸出されずにマレーシアの国内市
場に出荷されたため、大幅に下落する結果となった。

 なお、従来、シンガポールへの輸出は1日当たり約600頭で、これはマレーシア
の需要の約 6 %に相当する。


香港を第 2 の輸出市場に

 このため、政府や養豚団体などでは、価格の安定を図るためには、香港をシン
ガポールに次ぐ第2の輸出市場として位置付ける必要があるとして、10月末に交
渉団を派遣し、400トンの豚肉を試験輸出することで合意した。

 その初荷として、マレーシアは11月上旬に冷蔵品4トンおよび冷凍品16トンの
合計20トンの豚肉を輸出することとした。これらは空輸されるため、香港着の部
位別価格は、1kg当たり 2 〜 7 米ドルとかなり割高になっているものの、今回
の輸出は試験的なもので採算は度外視しているようだ。

 一方、香港の輸入業者は豚肉の品質などを調査するため、同時期にマレーシア
を訪れ、調査の結果、問題がなければ、香港で需要の高い冷蔵子豚肉の輸出が、
1ヵ月当たり2千頭分見込めるとしている。また、マレーシアの豚肉が継続して
香港で受け入れられるならば、将来は生体輸出の可能性も期待されている。

 これまで、マレーシアの豚輸出のほとんどはシンガポール向けで、97年の輸出
実績は、生体換算で103万頭となっている。


曲折が予想される香港への豚肉輸出

 近年、香港への豚肉の輸出は、大部分を占める中国の他にも、タイが積極的に
輸出攻勢をかけており、その数量は増加傾向を示している。

 しかし、先般、タイ産豚肉の輸入が急増したため、香港の農業団体などが、口
蹄疫汚染の危険がある豚肉輸入の阻止という口実で、在香港タイ領事館の前で抗
議を行った経緯がある。また、香港の消費者も、97年末の鳥インフルエンザ問題
以降、食肉の衛生面にかなりの神経をとがらせている。このため、マレーシア産
豚肉の輸出が軌道に乗るまでには、かなりの時間を要するものと見込まれている。


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