タイソンフーズ、タイ進出計画がとん挫


米国タイソンフーズ社、進出を断念

 11月13日、サハ・ファームは、鶏肉の輸入障壁のために、先に計画していたタ
イソンフーズ社との合弁事業計画を断念すると発表した。サハ・ファーム幹部は、
タイソンフーズ社がタイで投資活動を行うに当たってのさまざまな問題が把握で
きたと述べている。


輸入関税の免除や人件費低減が狙い

 タイの養鶏企業であるサハ・ファームは、今年10月、米国の大手パッカー、タ
イソンフーズ社と合弁企業を設立する計画を発表した。両社は、タイ国内に共同
で大規模な鶏肉加工場を建設し、米国から輸入した鶏肉を調製品に加工した後、
ヨーロッパや日本に再輸出するとしていた。

 これは、現在、タイでは輸入した鶏肉を加工して再輸出する場合、58%の輸入
関税が免除されるため、より安価な米国産鶏肉を使用することで輸出価格が低く
抑えられることや、タイの高い加工技術を利用することにより、ヨーロッパや日
本における新たな市場の開拓を狙ったものと見られている。また、人件費の安い
タイで、骨付きもも肉など米国内で余剰となる部位を調製品に加工することが、
特に日本市場における米国産鶏肉の価格競争力の強化につながること、現在、検
疫条件の問題で輸出ができないEU市場への米国産鶏肉の輸出が、実質的に可能に
なるとみられることも大きな要因と考えられている。


地元養鶏企業はこぞって大反発

 養鶏業の従事者や、タイ最大手の養鶏会社であるチャロン・ポカパン社をはじ
めとする地元養鶏企業では、安価な米国産鶏肉の輸入・加工・再輸出が、タイ産
鶏肉の生産量の減少につながり、それに伴う国産鶏肉価格の上昇、飼料会社など
の関連業界を含む大量の失業者の発生など、国内産業に悪影響が生じるとして反
対した。また、現在、EUが検疫条件などを理由に、米国からの鶏肉の輸入を禁止
していることから、もしタイ政府が米国からの鶏肉輸入を許可した場合、タイ産
鶏肉調製品が米国同様にEUから輸出を禁止される恐れがあることなどを挙げ、
大規模な抗議行動を展開した。さらに、タイ政府に対しては、実質的なタイ産鶏
肉の締め出しにつながる今回の両者の業務提携について、米国からの鶏肉輸入を
禁止する措置を取るよう陳情を行った。

 これに対して同国政府は、飼料会社なども含む養鶏関係業界との協議会を開催
し、米国政府およびタイソンフーズ社と話し合いの場を持つよう申し入れを行っ
ているとの説明を行っていた。その一方で、政府が、在タイ米国大使館から、早
期にタイソンフーズ社の鶏肉に対して輸入許可を出すよう要請されているとの報
道もあった。


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