中間選挙結果と農業政策への影響(米国)


民主党下院議席増により、保守化へ傾斜する農業政策

 11月3日に行われた米中間選挙の結果、上院では共和党55議席に対し民主党45
議席と議席数に変化はみられなかったが、下院では民主党が5議席増やした結果、
共和党の223議席に対し民主党が211議席と僅差に迫ることとなった。上下両院に
おいて、引き続き共和党が優勢を占めるため、農業政策に大きな変更はないもの
の、政策運営の保守化は避け難いものとみられている。

 具体的には、まず第1に、ファストトラック交渉権限の更新問題が挙げられる。 
9 月に下院本会議において行われた投票の結果、同法案は、賛成180票、反対243
票で否決されており、反対票のうち171票は民主党議員によるものであった。今回
の中間選挙で民主党が議席数を増やしたことにより、ファストトラック交渉権限
の更新はより困難になるものとみられる。現在交渉中の米州自由貿易圏(FTAA)
交渉に加え、世界貿易機関(WTO)次期交渉における米国のリーダーシップが損な
われることは、避け難くなるものとみられる。


加速化する保護主義的動き

 第2に、保護主義的動きの加速である。農畜産物価格の低迷を背景として、先
般、カナダと国境を接する州などで家畜および穀物の輸入規制が行われ、また、
家畜や畜産物の輸入に対するアンチダンピング提訴なども行われている。99年農
業予算においては、民主党の強力な押しにより、農家緊急支援対策の増額が図ら
れており、このような動きにさらに弾みがつくものとみられる。

 注目に値するのは、共和党議員の自由貿易協定などに対する態度の変化である。
93年の北米自由貿易協定(NAFTA)実施法では、43の共和党議員が反対票を投じた。
94年のウルグアイラウンド(UR)合意実施法では、これが56となり、98年9月の
ファストトラック法案では71にまで増加している。


現実味を帯びる96年農業法の実質的変更

 このような選挙結果を踏まえ、グリックマン農務長官は、「議会はこれまで以
上に、より真剣に現行農業法の実質的な変更を検討することになるかもしれない」
とコメントしている。また、下院農業委員長に就任予定のコンベスト議員(共和
党)も、96年農業法の実績を検討することに意欲を示している。

 また、知事選挙と併せて、農業生産に関連する住民投票も実施されている。コ
ロラド州では、養豚経営体に対して、臭いを防止するため、ラグーンなどに覆い
を設置することを求める規則が認可され、サウスダコタ州では、企業による農地
や家畜の所有を禁止するという規則が認可された。畜産関係者の間では、このよ
うな動きが全国的に拡大するのではないかと懸念されている。

 なお、カナダからの家畜などの輸入規制措置の端を開いたサウスダコタ州のジ
ャンクロー知事は、約 3 分の 2 の票を集め再選を果たしている。


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