EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○2000年末の牛肉介入在庫はゼロの見通し


99年に30万トン、2000年に20万トン強それぞれ減少の見通し

 EU委員会は、短・中期的な牛肉の介入在庫量の見通しを発表した。これによれ
ば、98年末に50万トンを超えていた介入在庫量は、99年に30万トン、2000年に20
万トン強それぞれ減少し、2000年末にはゼロになると見込まれている。

 このように、99年および2000年の2年間に介入在庫量が順調に減少すると予測
される背景は、牛飼養頭数の減少傾向から生産量が750〜760万トンと低水準で推
移する一方、消費量は730万トン台に落ち着くと見込まれているためである。さ
らに、ロシア向け食糧援助として牛肉15万トンが介入在庫から輸出されることか
ら、今後の介入在庫の減少に拍車がかかるとみられている。

EU15カ国における牛肉介入在庫量の短・中期見通し
be-eu05.gif (3074 バイト)
 資料:EU委員会
  注:99年および2000年の数値は見通し


99年1月末の介入在庫は一時的に増加

 介入在庫は、牛海綿状脳症(BSE)問題が発生した97年3月以降、消費の大幅低
下のため急増し、同年11月には62万7千トン(枝肉ベース)とピークに達した。
その後、牛肉消費の回復と生産の抑制措置に伴い需給ギャップは徐々に解消し、
加工向けおよび輸出向けの在庫放出が行われた。これにより、介入在庫量はわず
かずつではあるものの13ヵ月連続で減少し、98年12月末には50万トン強になった
(左図「牛肉介入在庫量」参照)。

 しかし、成牛価格(市場参考価格)は98年8月以降低落傾向を強め、99年1月に
は前年同月を9.6%下回る122.8ユーロ(16,200円:1ユーロ=132円)/100kgにま
で下落した(左図「成牛価格」参照)。これは、消費面で牛肉と競合関係にある
豚肉の需給が大幅に緩和し価格が記録的な安値となったことにより、牛肉から豚
肉への需要のシフトがあったためとみられる。

 このため、介入買入数量が売渡数量を上回ることとなり、1月末在庫量は、再
び増加に転じ52万トンになった。


ロシア向け食糧援助のうち牛肉3万トンが輸出

 3月にロシア向け食糧援助物資の輸送に関する入札が実施され、牛肉に関して
は、アイルランドの介入在庫2万トンおよびドイツの介入在庫1万トンが落札され
た。これにより、3月末にはEUからの食糧援助物資の第1陣がロシアに引き渡され
た。

 今回、EU側からの食糧援助の条件として、援助物資はロシア国内の市場価格で
販売することとし、その販売利益を用いて基金を創設、EUおよびロシア政府がこ
の基金を共同管理し、生活困窮者対策に利用されることとなっている。しかし、
4月中旬時点でも援助物資は販売されていないとの報道があり、援助物資の管理
に関して問題を指摘する声もある。


CAP改革で介入買入制度を見直し

 EU首脳会議は3月26日、共通農業政策(CAP)の改革に関して最終的に合意に
達したが、牛肉分野では改革の1つとして介入買入制度の見直しが決定された。

 今回の見直しでは、2002年7月以降、現行の介入買入制度を民間在庫補助制度
に移行することとされた。ただし、2002年7月以降も牛肉価格が暴落した場合の
セーフティーネット買い上げ、およびEU委員会の判断で必要に応じて臨時的な介
入買い上げを実施することができるとされており、当初のEU委員会の改革案より
も、介入買入措置の運用に当たっての裁量が広がった形で決着することとなった
(詳細は「特別レポート」参照)。

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