タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○ブラジルとの競合により、厳しさを増す日本およびEU向け輸出


EU向け輸出価格が、日本向けに大きく影響

 タイの皮なしむね肉のEU向け輸出価格については、ブラジルが通貨レアルの切
り下げでEU向けむね肉の輸出価格を2,000USドル/トン(以下、ドル)を下回る
価格でオファーしているため、2,000ドルからさらに引き下げざるを得ない状況に
追い込まれている。一般的に、タイにおける皮なしむね肉およびもも肉の輸出価
格の採算ラインは、1羽当たりの重量割合をそれぞれ約11%、約18%として、と
もに2,000ドルと言われている。タイでは、これまでEU向けむね肉の輸出価格が
高値であったことから、もも肉の輸出価格を低く抑えることができたために、日
本市場において中国、ブラジルなどの輸出国に対抗できた。しかし、今後のタイ
の輸出は、EU向けの輸出価格が採算を下回ることとなると、1,800〜1,850ドルで
商談を進めている日本向けもも肉の輸出価格を、採算が取れる水準まで引き上げ
ざるを得なくなり、競争力が大きく低下するものと見込まれている。


日本向け輸出価格は下落へ

 4月上旬に2,100ドルであったブラジルの日本向けもも肉のオファー価格は、現
在では1,800ドルに下落している。しかし、日本の需要者は、レアルの引き下げ率
を勘案すると、さらに引き下げの余地があるとして成約を控えているものの、ブ
ラジルはこれ以上の引き下げに応じていないため日本向けの成約が進んでいない
としている。しかし、ブラジルでは鶏肉生産量が増加傾向で推移しているため、
相当量の鶏肉を輸出に向けざるを得ない状況であることから、今後、1,800ドルを
やや下回る輸出価格で日本向けもも肉の成約が大量に行われると見込んでいるた
め、8月以降の日本への輸出量はかなり多くなるものと見込んでいる。

 一方、米国のブロイラーに関しては、消費の拡大に伴いむね肉への需要がます
ます拡大し、その反面、同国で需要が低調な骨付きもも肉の大量在庫が発生し、
大きな問題となっている。タイ業界では、今後、米国からこの骨付きもも肉が低
価格で輸出されると、タイ、中国などの輸出価格に大きく影響し、国際マーケッ
ト価格は、当分の間、低価格で推移するものと予測している。


高付加価値商品への転換

 このような情勢の中で、タイのある鶏肉輸出業者は、輸出価格の競争で数量を
拡大する戦略から、抗生物質などの薬剤を添加しない無投薬飼料で生産した鶏肉
を、高付加価値商品として輸出することに重点を置き始めている。同業者は、日
本の消費者が求めるものは、おいしいことに加えて安心かつ安全なものであり、
5年後は無投薬鶏肉でないと売れない時代が到来するのではないかと予測してい
る。


98年のブロイラー生産費はかなりの上昇

 タイの98年のブロイラー1羽当たりの生産費は、前年比14%増の53.1バーツ
(1kg当たりでは28.1バーツ)とかなり上昇した。経費の内訳では、飼料費が同
17%、薬剤費が同18%、水道光熱費が同15%それぞれ大きく上昇している。上昇
の要因については、98年に入って国産トウモロコシの卸売価格が高騰したこと、
98年初頭にバーツが大きく下落したことによる医薬品などの輸入品の価格が上昇
したことなどが影響したとみられている。特に、97年に1kg当たり4バーツ前半で
あったトウモロコシの農家販売価格(水分が14%以下のもの)は、98年1月から
同年7月までの間、2月の5.8バーツをピークに5バーツを超える高値で推移した。
なお、同価格は、同年12月には3.3バーツまで下落した。また、99年1月の生産費
は、前年同月比4%減の49.6バーツとなり、98年8月以降、下落傾向で推移してい
る。

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