豪州の牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○生乳生産、中期的に増加基調が続く見込み


飲用乳制度の続行などが前提条件

 豪州農業資源経済局(ABARE)主催の農業観測会議で3月、豪州酪農産業の短中
期的な需給見通しが公表された。同見通し策定の際の主要経済指標を見ると、米
ドルに対する豪ドルの通貨レートについては、98/99年度の1豪ドル当たり62米セ
ントを底値にその後は緩やかに上昇し、2003/04年度は72米セントまで上昇する
と想定している。豪州の経済成長率については、99/2000年度から2003/04年度
までの間年率3%前後で推移するとし、世界全体では99年に1.9%までに落込むも
のの、その後2004年までには平均3.3%程度に落ち着くと想定している。

 ABAREでは、酪農産業の需給見通し策定に当たり、各州政府による飲用乳制度
は現行のまま存続することを前提条件に挙げている。


99/2000年度は100億リットル台へ

 98/99年度の生乳生産量は、生乳生産のピークに当たる春季に良好な天候に恵
まれたことから、前年度を3.5%上回る97億7千3百万リットルになると見込まれ
ている。生産量は、今後も良好な輸出需要を受けて拡大基調が続くとしており、
99/2000年度に前年度を3.4%上回る101億6百万リットルと100億リットル(1,000
万トン)の大台に達した後、2003/4年度には105億リットルまで増加すると予
測している。


1頭当たり乳量増と頭数増が生産増のけん引役

 ABAREは、こうした生乳生産増の要因として、経産牛1頭当たり乳量および経
産牛頭数の増加を挙げている。98/99年度の1頭当たり乳量は、前年度を94リッ
トル上回る4,809リットルになると見込まれており、種牛の選抜、草地の改善、
飼養管理技術の向上などからその後も引き続き乳量の増加が続くとしている。こ
のため、2003/04年度は、98/99年度を299リットル上回る5,108リットルに達す
ると見込まれている。

 98/99年度の経産牛頭数については、前年度を1.5%上回る203万2千頭と予測さ
れており、その後は2000/01年度をピークにわずかながら減少するとみられてい
る。93/94年度以降、酪農経営の収益性が改善されたことにより酪農家の増頭意
欲が増し、年率3%程度の一貫した増頭傾向が続いたが、2000年6月で加工原料乳
生産者へ交付金を支払う国内市場支持制度が廃止されることから、加工向け乳価
の低下をもたらし、ひいては各州の飲用乳規制の緩和を招くといった恐れが規模
拡大への不安材料となり、頭数の伸びを停滞させるとみられている。


98/99年度をピークに加工向け乳価は低下、飲用向け乳価は安定

 一方、生産者乳価を見ると、98/99年度の加工向けは前年度を2.5%上回る24.9
セント/リットルと予測されている。しかし、国内市場支持制度の廃止や豪ドル
の対米ドル高、バターや粉乳など乳製品の国際価格の低下が見込まれるとして、
2003/04年度には20.7セント/リットルまで下落するとみられている。飲用向け
については、98/99年度は前年度を2.3%下回る51.7セント/リットルになるもの
の、各州政府による飲用乳規制がこのまま存続すると仮定しているため、2003/
04年度も52.4セント/リットルと安定した乳価が続くと予測されている。

 しかしながら、飲用乳制度の規制緩和の動向は、豪州の生乳需給における今後
の最大の不安定要素であることから、進行状況いかんではこれらの見通しが一変
することも考えられる。

生乳需給見通し
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 資料:ABARE「Australian Commodities」
 注1:経産牛頭数は、年間5千豪ドル以上の農業収入がある農家を対象とし、
    毎年度3月31日現在の頭数
  2:98/99年度以降はABAREによる予測値

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