EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○バター価格が続落


5カ月間で12.0%の値下がり

 98年11月まで、近年にない高値圏で推移したEUのバター価格(指標価格の1つ
であるオランダのブランドバター取引価格、以下「バター価格」)は、その後急
落し現在も下落している。99年4月の価格は、前年同月を11.5%下回る660ギルダ
ー(暫定値、約4万円:1ギルダー=60円)/100kgとなった。5カ月間で12.0%
値下がりしたことになる。

国際需給緩和が主因

 これは、98年に全般的に引き締まっていたバターの国際需給が、99年に入り緩
和したことが主因である。ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、99年
3月の国際価格(西欧主要積み出し港の本船渡し価格)は、137.5米ドル(約1万
7千円:1米ドル=121円)/100kgと前年同月を28.6%下回る大幅な値下がりと
なった。

 この背景には、EUがバター(バターオイルを含む)の世界貿易において25%以
上のシェアを占めている中で、世界最大のバター輸入国かつEU最大の輸出先(97
年には、域外向け輸出の約5割を占める8万トン)であるロシアで、98年8月に発
生した通貨急落による経済危機の影響などが依然としてあるためとみられる。EU
の98年1月から10月の域外向け輸出量は、前年同期比34%減の9万8千トンにな
った。一方、99年1月および2月のバター生産量が、前年同期比1.4%増の29万4
千トン(暫定値)となったことなども影響している。

◇図:バター価格の推移◇


今後の需給動向を考慮すると一段と下落する可能性

 現在、ドイツやアイルランドなど多くの加盟国では、価格の下落を受けて介入
買い入れが行われている。このため、99年3月末で約3千トンの介入在庫量は4
月末で約5千トンとなっており、今後も増加が見込まれる。また、夏期の過剰と
冬期の不足を調整する目的で行っている民間在庫補助制度(PSA:3月から8月
まで実施)に基づく在庫量は、3月末の約1万4千トンから4月末には約6万4千
トンに急増している。

 一部輸出業者の間では、輸出が低迷している中で、今後のEU経済の動向やコソ
ボ情勢の展開などにより、為替相場がドル高・ユーロ安の状況になれば、今以上
の輸出が行えるのではないかとの期待もあるが、全般的に見通しはあまり良くな
い。また、現在のところ、EUのバター需給の重要なカギを握るロシア向け輸出は、
同国の経済危機状況から早急に回復するとは考えにくい。さらに、EU委員会の予
測によれば、EUのバター消費量の減少が見込まれていること(99年の消費量は前
年比0.7%減の173万トン)や、生産が季節的に増産に向かうことを考慮すると、
バター価格は今後一段と下落する可能性もある。価格が一層低下した場合、EU委
員会は加盟各国から何らかの対策を講ずるよう迫られるものと予想される。

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