EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○デンマーク、98年の豚肉等の輸出は増加



前年比1.9%増

 デンマーク豚肉輸出機構連合(DS:同国のと畜組合の上部団体)によると、EU
最大の豚肉輸出国である同国の98年の輸出量(製品重量ベース、生体・調製品な
どを含む)は、輸出先ごとには増減があるものの、域内向け・域外向けがともに
増加したことから、前年比1.9%増の141万4千トンとなった。EUの主要生体豚輸
出国であるオランダで97年に発生した豚コレラの影響が残ったため、品目別では、
生体豚輸出が大幅に増加したことが大きい(前年比29.3%増の8万6千トン、枝肉
換算数量)。

 輸出量の6割以上を占める域内向けは、最大の輸出先であるドイツやフランス
向けが減少したものの、第2位の輸出先であるイギリスや他のEU諸国向けが増加
したことから、1.0%増の92万6千トンとなった。域外向けは、最大のシェアを占
める日本向けや、近年、輸出が大幅に伸びていたロシア向けが減少したものの、
米国やポーランド向けなどが増加したことから、3.7%増の48万8千トンとなった。

デンマークの豚肉等輸出量(98年)
po-eu05.gif (3706 バイト)
 資料:DS
 注 1 :製品重量ベース
   2 :生体、調製品などを含む


主要輸出先で異なる状況−ロシア向けはやや減にとどまる

 主要輸出先の状況を見ると、域内では、ドイツおよびフランス向けは、両国で
これまで繁殖用雌豚頭数が増加した結果、自国の生産量が増加していることが輸
出に影響したとみられる。しかし、デンマークからドイツへの子豚を主とする生
体豚輸出の流れは依然として止まっておらず、98年の輸出頭数は、前年比50%増
の177万頭と大幅に増加した。一方、イギリスおよびイタリア向けは、それぞれ
生産量が減少傾向にあること、ハムなどの加工品の消費が伸びており輸入が増加
していることが考えられる。

 域外では、日本向けは、米国に輸出シェアを奪われたことなどが影響している
とみられる。ロシア向けは減少したものの、98年8月の経済危機発生以前の輸出
が大幅に増加していたことや、98年11月に同国向けに限定した輸出補助金の大幅
引き上げにより輸出が再開されたことにより、あまり落ち込まなかった。一方、
米国向けは増加したが、これは、為替相場が全般的にドル高・クローネ安の基調
で推移したことなどが影響しているとみられる。


衛生対策などの徹底と動物愛護重視の戦略でさらに増加を目指す

 デンマークの豚肉等の輸出は国内の厳しい環境規制があるにもかかわらず、EU
の中で最も豚肉業界の再編が進んでいることや、綿密なマーケティング活動を行
っていることから、ほぼ順調に伸びてきている。98年の輸出量は、93年と比べて
24.4%の増加となっており、世界の豚肉等の貿易において重要な役割を果たして
いる。同国では3月に国内最大の豚と畜会社であるデニッシュ・クラウン社と第
2位のベストジュスク・スローテリア社(いずれも協同組合系)の合併がEU委員
会から承認され、EU最大のと畜会社が誕生したことから、今後、輸出競争力がま
すます強まるとみられる。

 こうした中で、デンマークは今後最大の輸出競争相手を米国と見なしており、
98年6月には業界関係者から成る調査団が米国に行き、同国の輸出競争力を調査
した。この結果、デンマークは、米国に対抗する戦略として、衛生対策や医薬品
の使用規制を一層強化するとともに、既にイギリス向け輸出で行っている動物愛
護に基づいた豚肉生産(1頭当たりの飼育スペースを従来より広くして飼育する
など)を一段と行っていくとしている。

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