米国の豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○肥育豚価格低迷も、98年の豚肉輸入量は大幅に増加


98年の豚肉輸入および輸出量、ともに大幅に増加

 米農務省(USDA)によると、98年の豚肉輸出量(枝肉換算ベース)は、前年
比18.1%増の55万8千トンとなった。国内の肥育豚価格が記録的な水準で低迷した
ため輸出価格が引き下げられたことなどから、日本およびメキシコ向けの輸出が
増加したことが主な要因となっている。一方、豚肉の輸入については数量制限も
なく関税も課せられていないものの、国内生産の増加を受けてここ数年豚肉輸入
量は減少傾向にあった。しかし、98年の豚肉輸入量(枝肉換算ベース)は前年比
11.5%増の32万トンとかなり増加した。

◇図:豚肉の輸入及び輸出量◇


米国内での肥育豚価格低迷にもかかわらず、カナダ、東欧などからの輸入が増加

 豚肉輸入量を輸入先別に見ると、上位4カ国からの輸入はいずれも増加してい
る。約7割を占めるカナダからの輸入は、前年比13.0%増の22万3千トンとなった。
カナダは生産した豚肉の約6分の1を米国に輸出しており、米国はカナダ産豚肉の
最大の輸出先となっている。97年の台湾での口蹄疫およびオランダなどにおける
豚コレラの発生以後、特に98年にカナダにおいても豚肉生産が急拡大(前年比7.3
%増)したため、カナダは価格水準にかかわらず米国に豚肉を輸出せざるを得な
い状況にあった。

 また、輸入量は少ないものの、ポーランドやハンガリーからの輸入も増加して
いる。これら東欧諸国の主要輸出先は本来EUとロシアであるが、ロシアの経済危
機およびEUにおける肥育豚価格低迷に加え、米ドル高基調の為替相場の影響もあ
り、米国への輸出を増加させたものとみられている。

◇図:豚肉の国別輸入量◇


と場直行豚を中心にカナダからの生体豚輸入も急増

 豚肉だけでなくカナダからの生体豚(肥育用子豚およびと場直行豚)輸入も急
増している。98年のカナダからの生体豚輸入頭数は、前年比29.7%増の412万頭
となった。このうち約6割がと場直行豚とみられている。このことが上述したカ
ナダなどから豚肉輸入の増加と合わせ、98年末に米国の肥育豚価格を記録的水準
にまで低下させた要因の1つともみられている。

◇図:カナダからの生体豚輸入頭数◇

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