豪州、農場経営安定に向けた新制度がスタート


農場経営者にとってリスク管理は必須

 豪州連邦政府は4月から、農場経営を安定させるための新たな施策として、農
場経営積立金制度(Farm Management Deposits:FMDs)をスタートさせた。 

 牛肉などの畜産物を含む豪州の農産物生産は、干ばつや洪水などの自然災害に
よる影響を受けやすく、また、輸出依存度が高いため、それらの販売価格も国際
需給の動向いかんで年々大きく変動する。

 一方、同国には農産物価格を支持するための介入買入れなどの施策はほとんど
存在せず、生産した農産物は時々の市場価格で販売することが基本とされている
ことから、農場経営者にとって、自らの経営リスクを適切に管理することは必須
の条件となっている。


非常時に備えた経営資金積み立てが有利

 このような事情を背景に導入されたFMDsは、農場経営者が非常時に備えた経営
対策資金の積み立てを有利に行えるように支援する制度であり、農業外収入が年
間5万豪ドル(約390万円:1豪ドル=約78円)を超えない者(農場経営を主たる
収入源とする者)のみを対象とし、1戸当たりの積み立て限度額は30万豪ドル
(約2,340万円)と定められている。

 積み立てられた経営対策資金は、最低12ヵ月間据え置くことを条件に課税所得
から控除されるが、その間においても預金利子は、通常の預金と同様に支払われ
ることが認められている。積み立てを行う金融機関は特に限定されておらず、金
利などの面で有利な機関を自由に選択できるとされているが、当該金融機関は、
便宜上、各戸ごとに一本化することが条件とされている。


積立資金利用の際は免税証明書が必要

 農場経営者は、農産物価格の下落などによって経営困難な事態に陥り、積み立
てた経営対策資金を利用する場合には、連邦政府に申請書を提出して経営状況に
関する審査を受けた後、「免税証明書」の発行を受けることとされている。

 そして、当該証明書の限度内の資金利用は非課税扱いのままとなるが、審査の
結果、証明書が発行されなかった場合や、記載限度額を超える資金を利用する場
合は、通常の所得と同様に見なされ、規定の税が課されることになる。


旧制度を大幅改定し経営者にとって有益な内容に

 今回の新制度は、従前の収入安定積立金制度(Income Equalization Deposits: 
IEDs)および農場経営基金制度(Farm Management Bonds: FMBs)の両制度を土
台としているが、従前のものは積立金額の61%のみが利子支払いの対象となって
いたのに対し、新制度では100%その対象となるなど、その中身については大幅
な改定が施されている。

 昨年来、アジア経済危機に端を発した国際需給の緩和によって羊毛価格が急落
する一方、干ばつの解消に伴って肉牛価格が高騰するなど、豪州の農産物価格は
相変わらず大きく揺れ動く状況が続いている。このため、今回の新制度は、不安
定となりがちな豪州の農場経営を安定させる貴重な手段として機能することが期
待されている。

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