長期化する豚価低迷(中国)


豚価低落、99年も継続

 昨年以来、豚価の低落傾向が続いている。豚肉価格の1つの指標となる四川省
の成都肉類産品卸売市場における豚肉価格は、97年には高値を維持したものの98
年には低落傾向を示し、99年に入っても回復の兆しは見られない。同市場におけ
る99年4月の冷凍枝肉および冷凍部分肉価格は1kg当たり7.3元(約110円:1元=
15円)および11.9元(約179円)となり、これを昨年の同時期と比較するとそれぞ
れ19.4%安、10.5%安となっている。

 また、農業部(農業省に相当)が公表している肉豚および豚肉の市場価格(卸
売と小売形態が混在していると思われる:全国平均)も98年前半の急落後、いっ
たん上昇に転じたものの99年に入ると再び低落傾向で推移している。99年4月の
子豚、肉豚および豚肉の市場価格は1kg当たり5.69元(約85円)、5.11元(約77円)
および9.03元(約135円)となり、前年同月と比較してそれぞれ48.7%、26.0%、
23.3%もの大幅な下落となっている。

 豚肉は中国の肉類総生産の67%を占め、伝統的に最も重要な「基幹食肉」であ
るだけに畜産関係者は長期にわたる豚価の低迷に危機感を募らせている。

◇図:成都肉類産品卸売市場価格の推移◇

◇図:肉豚および豚肉小売価格の推移◇


収益性悪化で減収は必至、一部では倒産も

 山東省畜牧局は年間出荷が1,000頭を超える全省960戸の養豚場のうち、今年第
1四半期のみで100戸余りが倒産に追い込まれたとしている。農業部では近年の
農村政策の重要課題として農民の増収を掲げてきたが、最近の豚価低落で豚1頭
当たりの損失が100元(1,500円)前後にもなり、浙江省では養豚経営の収益性を
測る指標とされる飼料穀物との価格比が92年以来最低の1:3.4程度に低下したと
試算されている(おおよその基準は1:5.5程度とされる)。農業部はこれ以上豚
価低迷が続けば、農民が畜産業に対して自信を失いかねず、今後の農村施策に支
障を来すとして懸念を強めている。


根強い増頭意欲や嗜好の多様化が要因

 長引く豚価低落が引き起こされた背景として、第1には97年の高水準の豚価に
刺激された農民の増頭意欲が挙げられる。当時は豚1頭当たりの利益が200元(3,
000円)にも上ったことから、多くの農家が飼養規模の拡大を図ったとされる。ま
た、近年の経済低迷による失業者や一時帰休者が養豚業に就くケースが増えたこ
とが一層の飼養頭数の増加を招いている。第2に、食生活の変化に伴う嗜好の多
様化により、豚肉に代わって牛肉、羊肉および家きん肉の消費が増加しているこ
とがある。それに加えて卵、牛乳、果物、高級野菜などにも嗜好が広がりつつあ
り、高所得者層だけでなく農民の豚肉離れも進んでいるとされている。第3に、
近年のロシアおよび東南アジア地域の経済危機による豚肉輸出の減少が挙げられ
る。99年第1四半期の中国の豚肉輸出量は約1万トンと前年同期の4分の1にとど
まっている。


国は積極的な市場介入に乗り出す

 こうした豚価の長期低迷に対処するため、国内貿易局(国内通産省に相当)は
今般、各地の国有食品企業に対して、生産コストを差し引いても適当な利潤を得
ることができる「保護価格」で積極的に農民から豚を買上げ、計画的に豚肉を備
蓄するよう指示した。また、四川省をはじめとした生産省と消費省間の豚肉流通
の合理化も併せて提唱している。

 さらに、行政が豚の生産調整、品種改良の指導などを行うことで市場の要求を
満たすとともに豚肉流通の近代化を図ることが豚価安定に寄与するとして、今後
の行政の市場コントロール強化を示唆している。

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