酪農に重点を置く畜産振興対策(タイ)


3年間の酪農振興策を策定

 タイ政府は、99年度から3年間の畜産振興政策を発表した。これは、特に同国
内で需要が高まっている牛乳の生産に重点を置いた酪農振興を中心としたものと
なっている。

 同国の酪農業は、97年の通貨危機までの急速な経済発展とともに拡大基調で推
移してきた。生乳生産量は、92年の22万3千トンから97年には41万8千トンへと
5年間で約2倍に増加した。また、飼養頭数も、92年の22万2千頭から97年の30万
3千頭へと順調に増頭した。


東部地域に畜産基地を設置、毎年8千頭の搾乳牛の増加を期待

 牛乳消費量は92年の22万3千トンから96年には154万1千トンへと急速に拡大
したものの、97年は通貨危機の影響で107万2千トンと大幅に減少しており、1人
当たり消費量も、96年の25.6kgから97年の17.6kgへと大幅な減少となっていた。

 今回の畜産振興対策では、豚や鶏のような比較的繁殖周期の短い畜種について
は輸出の拡大などを目標とし、特に豚については口蹄疫の清浄化対策など、日本
を含む新たな輸出市場への対応を行うこととしている。一方、乳牛や水牛などの
繁殖周期の長いものについては、生産拡大対策などの国内生産に主眼を置くこと
としている。この中には、同国東部地域の口蹄疫清浄化地区に新たな畜産基地を
設置し、1,600戸分の新規酪農家用地や国際水準に合致したと畜場の整備などを
行う計画が含まれている。また、この畜産基地の設置により、毎年8千頭の搾乳
牛の増加を期待しており、今後も高い需要の伸びが見込まれている牛乳について、
現在30%程度という低水準の自給率を向上させたいとしている。


失業者救済策としても期待が大きい酪農振興

 同国政府は、経済危機以降、国内には200万人以上の失業者がいるが、今回の措
置により、彼らが東部地域の新たな畜産基地で働くことが可能になることから、
多くの労働者が酪農業に就労するものとみられている。また、今回の計画では、
生産資材の中で最も輸入金額が大きく、年間50億バーツ(165億円:1バーツ=
3.3円)以上とも言われている動物用医薬品についても、国内での生産に切り替え
ることとしており、製薬部門も含めて雇用拡大に期待が持たれている。
これらの対策には、現時点では十分な予算措置が講じられていないものの、同国
における経済停滞の打開策の1つとして、その効果が期待されている。

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