豪州から豚肉を空輸(シンガポール)


マレーシア、インドネシアから生体豚などの輸入を禁止

 シンガポールでは、マレーシアで新たに発見されたニパ・ウイルスが原因とみ
られる症状でと畜場の労働者が死亡したことから、この進入を阻止するために3
月19日以降、マレーシアおよびインドネシアから生体豚などの輸入を禁止した。

 同国では、生鮮食品のほとんどが伝統的な市場であるウエットマーケットおよ
び量販店で販売されているが、今般の輸入禁止後は豚肉の販売がしばらくの間途
絶える状態が続いた。さらに、規模が零細な豚肉販売店は、長期間休業に追い込
まれており、かなりの者が廃業したとみられている。また、飲食店のメニューか
ら豚肉料理が姿を消し、鶏肉料理などに急きょ変更する店も多く現れている。変
更ができない豚肉専門の飲食店も、販売店と同様に休業もしくは廃業に追い込ま
れている。


豪州産は従前の2〜3割高、インドネシア産もひっ迫

 量販店などでは、人口の8割弱を占める中華系住民に欠くことのできない中華
料理の食材である豚肉の需要を満たすため、3月末以降、豪州から空輸した冷蔵
豚肉を販売している。しかし、物流コストはかなり高いものとなり、小売価格は
従前に比べ約2〜3割高いものとなっている。従来、ウエットマーケットで販売さ
れる豚肉は、早朝にと畜した豚を温と体で輸送し、その日の昼までに全量売り切
るために、冷蔵施設の必要性は低かった。したがって、冷蔵保管施設の整備が遅
れているウエットマーケットでは、冷蔵豚肉を取り扱える豚肉販売業者は、限ら
れた者となっている。また、消費者も、量販店の増加で冷蔵食肉の購入機会は増
えているものの、冷蔵および冷凍品よりも温と体の豚肉に慣れ親しんでいるため、
これを好んで購入する傾向にある。

 同国政府は、今後の食肉の消費について、冷蔵および冷凍品を奨励しているも
のの、これを徹底させるにはウエットマーケットにおける冷蔵施設の設置に多額
の費用が必要となること、と畜場において部分肉加工処理施設を併設しなければ
ならないこと、食肉販売業者に対して食肉流通知識の啓発を行う必要があること
などの問題が山積しており、現状の流通実態に任せざるを得ない状況となってい
る。

 一方、4月末からはインドネシアからの生体豚の輸入も再開されているが、供
給はひっ迫していると伝えられる。


新たな輸入先の開拓などに取り組む

 これまで安定した豚の輸入先であったマレーシアが、ニパ・ウイルスに感染し
たとみられる豚を大量に殺処分した影響で、今後、シンガポールは同国から安定
した輸入が見込める状況にはない。このため、シンガポールは、新たな輸入先の
開拓および冷凍品などへの取り組みの強化を早急に行う必要があるとみられる。

 今般の疾病発生前、同国の豚の主な輸入国は、生体がマレーシアおよびインド
ネシア、部分肉がオランダ、デンマーク、米国などであったが、今般、同国政府
は豪州から冷蔵豚肉を輸入するに当たり、BEキャンベル社ほか6社を指定工場と
してリストアップしている。

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