世界の飼料穀物の需給動向/b>


◇絵でみる需給動向◇


○98/99年度の米国トウモロコシ輸出は大幅に回復


世界のトウモロコシ輸出の4分の3を占める

 米農務省(USDA)が8月に発表した穀物需給見通しによれば、98/99年度(10
〜9月)のトウモロコシ輸出量は、前年度比32.6%増の5千万トンと大幅な回復が
見込まれている。

これは、前年度の輸出量が低水準であったためであるが、98/99年度は、アジア
地域の経済が回復基調にあることや、メキシコ、エジプト、サウジアラビアで輸
入需要が増加していることに加え、競争相手国であるアルゼンチンの輸出量が減
少するためとしている。

 これにより、世界のトウモロコシ輸出に占める米国のシェアは97/98年度に6
割を割り込んだものの、98/99年度には再び75%に回復するとみられている。

 99/2000年度については、生産量が2.1%減と見込まれていることもあり、輸
出量は3.0%減の4,850万トンと予測されている。

◇図:世界のトウモロコシ輸出量◇


生産量に占める輸出割合は低下傾向

 米国のトウモロコシ輸出量は、世界のトウモロコシ需給に影響されつつも、80
/81年以降ほぼ4千万〜6千万トンで推移してきた。近年では、94/95年度に史上
最大の生産高(2億5千7百万トン)を記録したことから、輸出量も5千9百万トン
と高水準に達した。しかし、95/96年度は干ばつにより生産量が大きく落ち込み、
96年には相場が空前の高値を記録したものの、96/97年度および97/98年度は経
済危機によるアジア市場の低迷、アルゼンチンなどの輸出競合国の台頭などによ
り、輸出量は3年連続で減少した。

 一方、国内消費量は、ブロイラーや豚などの生産が拡大したことから、飼料用
向けが着実に増加し、98/99年度は前年度比1.8%増の1億8千8百万トンと3年連
続の増加が見込まれている。長期的に見ても、国内消費量は80年代前半で1億2千
万トン台であったが、90年代後半には1億8千万トン台に拡大した。

 これにより、輸出量と国内消費量の比率は80年代前半が3:7であったが、90年
代後半には2:8に近づいている。96年農業法による作付制限の撤廃もあり、近年
のトウモロコシの生産拡大は、輸出市場よりむしろブロイラー産業や養豚業から
の旺盛な飼料需要を基盤とした国内市場の拡大によって支えられてきたと言える。

◇図:米国のトウモロコシ輸出量および国内消費量◇


遺伝子組み換え農産物の忌避傾向が懸念材料

 世界最大の穀物輸出国である米国は、最近の遺伝子組み換え農産物をめぐる議
論に重大な関心を寄せている。

 EUでは、遺伝子組み換え農産物の安全性や環境に対する影響を懸念し、6月に
遺伝子組み換え農産物の新規の認可を一時停止するとともに、一定割合以上の遺
伝子組み換え農産物を含む製品に対して表示を義務付けるなど、遺伝子組み換え
農産物を規制する動きが強まっている。

 わが国でも8月10日、食品表示問題懇談会遺伝子組換え食品部会は、最終報告
として「遺伝子組換え食品の表示のあり方」を取りまとめた。農林水産省は、こ
の報告書を消費者の関心に応え、かつ、表示の合理性、信頼性および実行可能性
が確保されたものであるとして、その内容に則して改正JAS法に基づく品質表示
基準の原案作りに着手した。遺伝子組み換え農産物を原材料とする指定された品
目の義務表示は、今後所要の手続きを経て、2000年4月から施行される(1年間の
猶予期間あり)としている。

 一方、米国はこれらの動きを警戒し、表示義務付けの動きは「新たな貿易障壁」
と強く反発している。このように、遺伝子組み換え農産物をめぐる主要国の対応
の違いは、貿易上の大きな争点として浮上しており、世界貿易機関(WTO)の次
期農業交渉でもテーマの1つとして取り上げられる可能性が強まっている。

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