オーガニック農業への転換が加速(イギリス)


消費の伸びに追いつかない国内生産

 イギリスのオーガニック農産物の消費量は、近年急速に増加している。しかし
ながら、消費の急速な伸びに国内生産が追いつかず、消費量の約70%を輸入に依
存する状況となっている。これは、イギリス政府がこれまでオーガニック農業の
振興に関してあまり積極的でなく、他のEU加盟国と比較してオーガニック農産物
の生産者に対する補助水準が低かったことが背景とみられる。このため、イギリ
スのオーガニック農地のEUにおけるシェアは、85年の第3位から97年には第9位
へと大きく後退している。


政府がオーガニック農業への転換を推進

 こうした中、イギリスでは、政府が新たなオーガニック農業の生産振興策とし
て99年4月からオーガニック農業計画(OFS:Organic Farming Scheme)を開始し
たこともあり、オーガニック農業への転換を図る生産者が急増している。オーガ
ニック農業へ転換を図っている農地面積は、99年4月現在、27万5千ヘクタールで
前年同期(5万5千ヘクタール)の約5倍に達している。OFSは、オーガニック農業
へ転換する生産者を対象として5年間にわたり補助金を交付するもので、補助金
単価は旧計画に比べて約2倍に増額された。予算総額も旧計画(98年度:98年4月
〜99年3月)の約100万ポンド(約1億9千万円:1ポンド=186円)から、OFSでは
99年度に620万ポンド(11億5千万円)と約6倍に拡大され、2000年度には850万ポ
ンド(15億8千万円)とさらに増額される予定である。


申請者急増からわずか4ヵ月で補助金財源が底をつく

 99年度におけるOFSへの申請者数は、約500生産者(申請面積:4万2千ヘクタ
ール)となり、既に旧計画の98年度の年間申請者数である222生産者(申請面積
:1万3千ヘクタール)を大きく上回っている。しかし、申請者数が増加した結果、
OFS開始後、約4ヵ月間で今年度生産者に交付される補助金予算は全額生産者に割
り当てられ、財源が底をつく状況となった。

 イギリス最大のオーガニック認証団体であるソイル・アソシエーションは、実
態を反映しない政府の予算措置を非難するとともに、こうした予算上の制約がオ
ーガニック農業へ転換しようとする生産者の意欲に水を差すとして懸念しており、
今後、政府に対し予算の増額を求めていくものとみられる。


今後も拡大を続けるオーガニック農産物の消費

 オーガニック農業への転換が加速した背景の1つには、ベルギーにおける畜産
物のダイオキシン汚染問題や遺伝子組み換え農産物の是非をめぐる議論などを契
機として、消費者の間に食品の安全性に対しての関心が高まっていることがある。
このような状況を反映して、イギリスにおけるオーガニック食品の小売段階の売
上高は、98年には前年比40%増の3億5千万ポンド(651億円)と急増した。この
傾向は今後も続くとみられており、2002年には10億ポンド(1千9百億円)に達し、
全食料品の7〜8%を占めるものと見込まれている。

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