農業労働力は引き続き減少(EU)


農業労働力は一貫して減少、ただし減少幅は縮小

 EU統計局(EUROSTAT)は、98年のEUにおける農業労働力に関する統計を公表
した。これによると、98年の農業労働力(フルタイム労働に換算)は、672万9千
人で前年を1.7%下回った。この結果、98年のEUにおける産業全体に占める農業
労働力の比率は、97年の4.6%からさらに減少するものとみられる。EUの農業労
働力は、長期間にわたり一貫して減少傾向が続いている。しかしながら、減少率
は92年および93年の実績(前年比5%減程度)と比較して最近5年間は縮小傾向に
ある。

EU(15カ国)における農業労働力
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 注:89年以前と98年の数値は、ドイツにおける対象地域が
   異なるため連続しない。


依然、家族労働が主体

 これを国別に見ると、イタリア、スペインおよびフランスの3ヵ国で全体の54
%を占めている。また、ドイツをはじめ13ヵ国で減少する一方、スペインでは野
菜、かんきつ果樹、オリーブの豊作により、オランダでは園芸作物の作付け拡大
により、それぞれ雇用労働需要が増加したことから農業労働力が増加した。

 労働力を家族・非家族の別で見ると、家族労働が全体の約75%を占めている。
国別の家族労働の割合は、フィンランドで94%と最も高く、イギリスで65%と最
も低い。98年には、家族労働の割合が減少する一方、非家族労働がわずかに増加
した。これは、小規模層を中心に家族労働力不足を雇用労働力で補う傾向がみら
れること、また、家族経営の担い手である高齢者に対する早期離農促進や女性労
働力の他産業への流出が進んだことなどが要因とみられる。非家族労働力は、作
物の収穫量等で大きく変動するが、長期的に見ると、徐々にではあるが非家族労
働の割合が増加してきている。

◇図:EUの国別農業労働力(98年)◇


農業労働力の減少の一方で生産性は向上

 経営分野別労働力(95年)の割合を見ると、酪農が最も大きく全体の13.4%を
占めている。また、1農家当たりの労働力は、園芸作物(2.7人)が最も大きく酪
農(1.7人)が続いている。

 98年の1人当たりの生産性は、農業労働力が減少する中で、農産物生産量が1.5
%増加した結果向上した。また、長期的(81年と97年の比較)に見ると、ほぼす
べての加盟国で著しい生産性の向上がみられた。これは、技術革新による集約的
な農業が進む一方で、農業労働力の他産業への流出が進んだためとみられる。

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