農牧展で大統領が農家支援策を発表(アルゼンチン)


1875年に始まり113回を数える伝統行事

 ブエノスアイレス市内で3週間にわたり開催された当地の冬の風物詩「国際農
牧工業展」(以下「農牧展」という。)が、8月11日に閉幕した。1875年に始ま
り、今年で113回を数えるこの伝統行事では、家畜や家きんの品評会、国内外の
農業機械などの展示が大々的に行われ、毎年、大勢の来場者でにぎわう。主催者
側の発表によれば、今年の農牧展には、昨年を10%程度上回る約135万人が来場
した。

 主催者であるアルゼンチン農牧協会(SRA)は、大土地所有者を中心に約9千
人の会員から構成され、アルゼンチンの4つの農業全国団体の中で、伝統的に最
も政治的影響力が大きい団体とされている。


農家の経営悪化を反映し、開幕前日に農業団体がデモ行進

 同国では、農産物市況の低迷、ブラジルの通貨切り下げなどの影響による農家
経営の悪化が見られる中、新たに導入された税金などに抗議し今年に入り農業団
体が2度のストライキを実施した。農牧展の開幕前日の7月21日には、一部農業団
体がブエノスアイレス市内で7千人規模のデモ行進を実施するなど、政府と農業
セクターの間で緊張が高まる中、今年の農牧展は開催された。


メネム大統領が農家支援策を示し農業団体の理解を求める

 このような状況の中で、メネム大統領は8月7日、農牧展の公式の開会式におけ
る演説において、農業セクターの抱える問題に関し、今後も農業団体と話し合い
を続け、双方の合意に基づく対策を探る姿勢を明らかにした。また、メネム大統
領は、農家支援策として既に実行に移されている対策を次の通り示し、農業団体
に理解を求めた。   

@ 特定の農業融資について返済期間を最高20年とする融資への借り換え

A 差し押さえとなった担保物件の競売停止

B 洪水等の被害地域における農家への金融支援として資産税などの支払延長

C 道路整備における米州開発銀行との融資合意

D 農産物、林産品、かんきつ類、綿の輸送に対する高速料金の25%引き下げ

E 乳製品に対するメルコスル域外関税の30%への引き上げ

F 国立銀行などによる穀物の作付け・収穫に対する8億ペソ(約912億円:1
 ペソ=114円)の融資枠の設定および3%の金利補助

G 国立銀行による生産者や農業協同組合への運転資金に対する融資の返済期間の延長

H 豚のと畜税6ペソ(約684円)のカット


新税の改正に加え農家支援の追加対策案を示す

 また、メネム大統領は、今後、政府が推し進めるべき対策として、2つの新税
の改正(現在、国会で審議中)のほか、次の通り農家支援の追加対策案を発表し
た。

@ 穀物農家への金融支援として、業界の支援を得た国立銀行の特別プログラム
 による種子、肥料、農薬の支払いを収穫後60日まで延長

A 2000年1月1日以降における油糧種子の輸出税(現行税率3.5%)の撤廃

B ディーゼル油に課せられる税金の撤廃

  これら対策案の具体的な実施については、今後、議会などを通じ議論されるこ
とになるが、Bについては経済公共事業省フェルナンデス大臣による強い反対が
あるなど、結論が出るには、まだ時間がかかるものとみられている。

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