粗飼料業界は研究開発が課題(豪州)


粗飼料の国内流通と輸出が増加

 豪州では、近年、マメ科牧草の乾草や乾燥えん麦(オーツ・ヘイ)などを中心
に、粗飼料の国内流通および輸出が大幅に増加している。これに伴い粗飼料製品
の研究開発も活発に行われているものの、財源不足が深刻化しており、課徴金制
度の導入による資金の確保などが検討されている。


酪農経営の大規模化により需要が拡大

 豪州の酪農や肉牛生産は、一般に放牧を基本としている。しかし、酪農を中心
に経営の大規模化が進むにつれて、補助飼料を計画的に利用する経営が増加して
いる。補助飼料は、麦類やソルガムなどの飼料穀物が中心であるが、マメ科牧草
の乾草やオーツ・ヘイなどの粗飼料への需要も大幅に増加している。

 乾草などの粗飼料は、従来、農場内で自給的に生産・消費される割合が高く、
外部への流通は、同一地域内の生産者間の直接取引にほぼ限定されていた。しか
し、需要が増えるにつれて、広域にわたる流通販売が大幅に増加し、国外にも大
量に輸出されるようになった。98/99年度には豪州全体で約500万トンの粗飼料
が生産され、このうち約100万トンが国内に流通、約30万トンが輸出された。輸
出量は、過去5年間で3倍以上に急増している。国内に流通する粗飼料はマメ科牧
草の乾草が主体であり、輸出向けはオーツ・ヘイが大部分であるが、輸出量の大
半(約85%)はわが国に向けられている。


流通粗飼料の増加に伴い品質をめぐるトラブルも増加

 こうした状況を背景に、販売用の粗飼料を大量に生産する農場経営者や、大型
機械を所有するコントラクター、圧縮梱包などの加工業者、さらには専門の流通
販売業者も現われ、95年2月には、これらの業界関係者によって豪州粗飼料協会
(AFIA)が結成された。8月中旬、オーツ・ヘイの主産地であるサウスオーストラ
リア州のアデレードでAFIAの年次総会が開催されたが、会場は新しいビジネスを
担う多数の関係者の熱気にあふれていた。

 一方、粗飼料の流通販売量が増えるにつれて、その品質をめぐるトラブルも増
加している。わが国では、96年、豪州産オーツ・ヘイに混入したライグラス中の
コリネトキシンに起因する中毒によって、6頭の牛が死亡する事件が起きた。ま
た、多くの需要者から、品質的には同等とされている粗飼料であっても、牛のし
好性に大きな格差が見られるなどの問題が指摘されている。


業界全体の資金不足が深刻化

 このため、各州の大学や研究機関では、粗飼料の品質管理や牛のし好性に影響
を及ぼす要因などについて多くの試験研究が行われているが、これらの研究開発
費が大幅に不足し問題となっている。農業研究開発公社(RIRDC)の粗飼料の研
究開発費は年間約17万ドル(約1千2百万円:1豪ドル=71円)にすぎず、穀物研
究開発公社(GRDC)も年間2百万ドル(約1億4千万円)を粗飼料向けの研究開発
に投じているが、業界全体の資金不足は深刻となっている。AFIAは、連邦政府を
通じて、肉牛業界や酪農業界などに研究開発費の提供を要請しているが、現在の
ところ具体的な見通しは立っていない。良質な流通粗飼料への需要は根強いだけ
に、今後は、研究開発の促進が業界発展のカギになるとみられている。

元のページに戻る