再発するニューカッスル病(豪州)


シドニー近郊で8千羽の鶏を処分

 豪州国営放送(ABC)によると、8月23日、ニューサウスウェールズ(NSW)
州シドニー市の西方約30kmに位置するスコーフィールドの養鶏場で、ニューカッ
スル病(ND)の発生が確認された。直ちに同養鶏場の約8千羽の鶏が廃棄処分さ
れ、検疫当局により、NDの拡散を食い止めるべく発生農場の周辺道路が封鎖さ
れているものの、完全な防疫体制を構築するには約3週間要するとみられている。


同一州内で1年間に3回発生

 豪州では、1930年代にビクトリア州でNDが2例報告されて以来、長年にわたり
発生は見られなかった。しかし、98年9月、約9万羽を処分することとなったブラ
ックタウンを発端に、今年4月に約190万羽を処分したマングローブマウンテン、
そして今回のスコーフィールドと、同じNSW州内で1年間に3回もNDが発生する
こととなった。


前回被害に対する連邦政府の救済措置を実施中

 特に被害の大きかったマングローブマウンテンでは、多数の養鶏農家が壊滅的
な損害を被ったため、連邦政府による救済措置が実施されている。連邦政府は、
同地域を「特別被災地域」に指定することは見送ったものの、総額850万豪ドル
(約6億円:1豪ドル=71円)の生産者支援パッケージの実施を決定した。その後
8月24日には、「家族農場再建計画」に基づく1年間の所得保証の実施と、ND再
発防止に向けた1千万豪ドル(約7億円)の研究対策費の支出を発表したところで
あった。

 また、同日には、マングローブマウンテンのND発生以来、約5ヵ月にわたって
同地域のND根絶対策を指揮してきた検疫コントロールセンターも、ようやくそ
の役目を終え閉鎖されたばかりであった。


ND根絶からワクチン接種へ対策転換

 豪州検疫検査局(AQIS)を中心とする検疫関係者は、マングローブマウンテン
のND根絶に2千万豪ドル(約14億円)もの対策費が使われた事実を重く見て、ND
が再発した場合には、従来のND根絶からワクチン接種へと基本対策を転換するこ
とに原則的に合意していた。こうした中、再びNDの発生が報じられることとなっ
たことから、報道翌日には各州の検疫行政関係者による緊急対策会議が開催され、
直ちにワクチンの接種に踏み切ることが確認された。今回の発生農場を中心に半
径3km以内の地域を対象としたワクチン接種を行うことで、NDの拡大を抑制する
対策が講じられつつある。


輸入検疫条件への影響を想定

 豪州は、NDなど病疫の侵入を防止するという理由で、鶏や鶏肉の輸入に厳し
い検疫条件を課しており、輸出国との貿易摩擦の一因ともなっている。このため、
今回の基本防疫対策の転換は対外的な論議を呼ぶ可能性もある。

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