安定した飼料需要に追いつかないトウモロコシ生産(フィリピン)


干ばつの影響から立ち直るトウモロコシ生産

 フィリピンのトウモロコシ生産は、約7割がミンダナオ島で収穫されており、
97/98年度(7月から翌年6月まで。以下同じ。)にエル・ニーニョ現象による干
ばつの影響で、前年度比約16%減の353万トンとなった。しかし、98/99年度に
はエル・ニーニョの終息により、約38%増の489万トン(速報値)と、過去5年間
で最高の水準に回復した。97/98年度は、総作付面積が230万ヘクタールで、う
ち食糧と飼料の両方に使われるホワイトコーンが140万ヘクタール、主として飼
料用のイエローコーンが90万ヘクタールとなっており、総生産量のうち、イエロ
ーコーンの生産量は160万トンとなった。


イエローコーンの需要拡大も、生産が追いつかず

 トウモロコシの需要は、全体の約22%が直接食用、約65%が飼料用、残り約13
%がコーン油、コーンスターチ、スナック菓子などの加工用として消費されてい
る。ホワイトコーンの需要は、パン、めん類など小麦を原料とした食品の人気が
高まるにつれて年々減少しているが、イエローコーンは、同国における食肉消費
の増加に伴う飼料需要の拡大から、生産が需要に追いつかない状況となっており、
ここ数年は恒常的な輸入を強いられている。99年のトウモロコシの輸入も、アル
ゼンチン、中国、タイおよび米国から98年を上回る数量が見込まれている。

トウモロコシの需給
morokosi.gif (4680 バイト)
 注1:資料は、農業省統計局
  2:98/99年度は速報値


飼料用不足分は輸入大麦、えん麦で代替

 このような中で、同国が抱える深刻な問題は、トウモロコシの生産性(単収)
が1ヘクタール当たりわずか1トンと低いことで、米国、アルゼンチンと比較して
大幅に劣っている。しかも、トウモロコシの輸入に当たっては、高い関税水準な
どによる制約が多く、畜産農家などでは、一昨年からトウモロコシの代替品とし
て、低関税率で比較的輸入が容易な大麦、えん麦などの使用を増加させている。
しかし、これら代替品が増加することは、畜産農家などには利益をもたらす反面、
トウモロコシ生産者などにとっては大きな打撃となっている。

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